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2024年6月の二酸化窒素の自主測定結果の報告

2024年度の西淀川区内の二酸化窒素の自主測定結果の報告です。

あおぞら財団では、年に2回、西淀川区内で二酸化窒素(NO2)の自主測定をしています。この自主測定は、大阪から公害をなくす会が主体として大阪府下で行っている調査に協力する形で行っています。

西淀川区はかつて公害の街と呼ばれ、長期間にわたって大気汚染物質濃度が高く、甚大な健康被害をもたらしました。累計7,000人を超える方が公害病として認定されています。西淀区内には環境省や国交省が測定している測定局がありますが、そういった場所以外の大気汚染がどうなっているのかを把握するために、独自で測定を続けています。

西淀川区では、道路沿道環境の大気汚染を改善するために、道路管理者と公害患者が共に話し合う場として西淀川道路連絡会を開催しています。この連絡会は、公害裁判において、原告(公害患者)・国・旧公団(現・高速道路会社)との間で交わされた和解条項に基づいて設置されたものです。今までにPM2.5の測定の早期開始、国道43号沿道の環境対策、環境ロードプライシング等の様々な対策を行っています。NO2の自主測定はこれらの対策の成果の評価ともいえます。

■測定概要

測定方法:大気中のNO2濃度を測定できる「天谷式カプセル」を用います。24時間暴露したカプセルにザルツマン試薬を入れ、NO2を化学反応、発色させ比色分析により濃度を測ります。
測定場所:西淀川区内 5か所
■測定日:

2018年度 6月7日(木)17時~8日(金)17時
12月6日(木)18時~7日(金)18時
2019年度 6月6日(木)17時~7日(金)17時
12月5日(木)17時~6日(金)17時
2020年度 6月4日(木)17時~5日(金)17時
12月2日(木)17時~3日(金)17時
2021年度 5月20日(木)17時~21日(金)17時*
12月4日(木)17時~5日(金)17時
2022年度 6月17日(木)17時~18日(金)17時
12月1日(木)17時~2日(金)17時
2023年度 6月1日(木)17時~2日(金)17時
12月7日(木)17時~8日(金)17時
2024年度 6月6日(木)17時~7日(金)17時

*ソラダス2021にて測定

■測定結果

 単位(ppb) 2018年6月 2018年12月 2019年6月 2019年12月 2020年6月 2020年12月 2021年6月 2021年12月 2022年6月 2022年12月 2023年6月 2023年12月 2024年12月
1 出来島小学校(国道43号)  43  40 53 21 36 24 33 33 20 25 35 19
2 大和田交差点(国道43号)  56  50 66 29 35 36 36 36 46 27 63 44 35
3 歌島橋交差点(国道2号)  49  34 50 21 30 23 177 26 34 18 37 36 18
4 あおぞらビル前(国道2号)  40  31 46 17 30 23 177 33 26 21 53 22
5 緑陰道路(エルモ前)  31  21 30 9 12 10 22 16 9 24 27 8

西淀川区内の二酸化窒素の自主測定結果

2024年度6月測定分について、緑陰道路で計測したうちのカプセルの一つが落下してしまったため、1つのカプセルのみの計測結果です。

今まで12月より6月の方が濃度が高い傾向にありましたが、今回は全体的に前回の2023年12月のデータよりも低いという結果になり、すべてのデータが環境基準の下限値より下回っていました。なお、2023年6月の測定日は、曇り~晴れ、湿度は41~62%、風速1~3m/sでした。

今回計測した中で一番濃度が高いのは、大和田交差点で35 ppb。交差点の真ん中で計測しています。同じ国道43号沿いですが、出来島小は19ppbと低くなっていました。

自主測定は国道沿いを中心に測定しています。近年、国道43号の交通量は減少傾向にあり、2000年には8万台を超えていましたが2023年には7.2万台に、2万3千台を超えていた大型車は1万7千台ほどになっています。自主測定の結果からは、道路沿道対策の効果があるとは言いづらいですが、道路連絡会等を通して、道路沿道対策を継続して実施するよう国や阪神高速道路株式会社にはたらきかけ続けます。

国道43号の交通量の推移

なお、2021年9 月にWHO(世界保健機関)が 0.012ppm 以下という指針を示しています。2024年6月の測定でWHOの指針を下回っている箇所は緑陰道路のみで、道路沿道ではまだまだ達成できておらず、まだまだ見えない汚染が続いています。

※二酸化窒素に係る環境基準(日本):1時間値の1日平均値が40ppbから60ppbまでのゾーン内又はそれ以下であること。

参考:大阪から公害をなくす会「ソラダス・NO2測定運動」

参考:大阪市「大気環境の状況

参考:西淀川道路連絡会 道路沿道の環境対策を検討するために、道路管理者と公害患者が共に話し合う場です。今までにPM2.5の測定の早期開始、国道43号沿道の環境対策、環境ロードプライシング等の様々な対策を行っています。

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習 — aozorafoundation 公開日 2024年7月17日5:41 PM

【映像】元神戸製鋼 山岸さんのインタビュー映像の公開

西淀川公害訴訟の被告企業のひとつである神戸製鋼の元法務室室長で、訴訟の担当者だった山岸さん。
裁判当時の企業の取り組みや、訴訟担当者として、また今となって感じる想いを語ったインタビュー映像をyoutubeで公開しました。

【山岸 公夫さん】 1943年生まれ。西淀川公害訴訟の被告企業のひとつである神戸製鋼の元法務室室長で、訴訟の担当者だった。現在はあおぞら財団の理事を務める。

映像協力 岸本景子
解説出典:「記録で見る大気汚染と裁判」独立行政法人環境再生保全機構
制作・著作 公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)
※この動画は地球環境基金の助成を受けて作成しています。


●インタビューの全容(テキスト)は下記のサイトからダウンロードして読むことができます。

▼外部サイト(ストアーズ)
オーラルヒストリー「企業の側からみた西淀川公害」山岸 公夫さん(元神戸製鋼)

楽らく呼吸会「自己管理、呼吸筋ストレッチ体操」を開催(7/12)

7月12日に、楽らく呼吸会を行いました。

今回はびわこリハビリテーション専門職大学の千住秀明先生を講師にお招きして、COPDなど呼吸器疾患との付き合い方、呼吸筋ストレッチについてお話をお聞きました。
参加者は全部で12人(スタッフ2人、講師1人)

大気汚染などの公害や喫煙などにより、呼吸器疾患の患者数が増えています。薬療法だけでなく、治療の初期の段階から呼吸リハビリテーションをやったほうが良いと千住先生がおっしゃいました。

血液酸素の不足により、運動が苦しくなり、動かなくなります。運動不足によりさらに血液酸素が足りなくなり息苦しさが増します。こういう悪循環を防ぐために、まず呼吸筋を鍛えます!それが呼吸筋ストレッチです。

始まる前に、皆さんの血液酸素を測ります。

健康の司令塔である肺の重要性について説明がされました。

呼吸に使われる筋肉を鍛えるためのストレッチ体操を教わりました。

体操が終わったあと、千住先生が呼吸筋を伸ばすマッサージをしてくれて大人気でした。

公害患者である須恵さんは、毎日民謡を歌って、6,7千歩を歩いて、今年で90歳を迎えます。公害患者であっても、健康なライフスタイルで生活していけば、加齢による不自由に対抗できます。

現在日本人は、健康寿命75歳に対して平均寿命が87歳になりました。健康寿命を超えて健康的な日々を送れるように、まず呼吸リハビリテーションに取り組みましょう!

参考:千住秀明:「COPDに対する呼吸リハビリテーションの有用性 -普及と啓発活動の好機をとらえる-」、2023.01.30 週刊医学界新聞(通常号)、第3503号

(あおぞら財団アルバイト・王子常)


あおぞら財団では、ぜん息やCOPDを抱えながら苦しむ患者さん同士が日頃の病気の悩みを交流したり、勉強会で学びながら、病気と向き合っていこう、またお互いが支えあっていこうと、楽らく呼吸会を開催しています。

次は、9月13日(金)に開催します。次回のテーマは「栄養について」です。ご参加を希望される方はあおぞら財団までご連絡ください(Tel 06-6475-8885)

【日  時】2024年9月13日(金)13:30~15:00
【内  容】栄養について
【講  師】管理栄養士
【開催場所】グリーンルーム(大阪市西淀川区千舟1丁目1番1号
あおぞらビル3F会議室 あおぞらビルへのアクセスはこちら
【参加費用】 無料
【対  象】・ぜん息やCOPDなどの呼吸器疾患がある方、ご家族の方
・呼吸ケア・リハビリテーションに興味のある方
【申し込み方法】あおぞら財団(Tel 06-6475-8885、担当:谷内・鎗山)までお申し込みください。

2024rakurakuomote 2024rakurakuura

過去の楽らく呼吸会の取り組みについてはこちらをご覧下さい。

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境保健 — aozorafoundation 公開日 11:16 AM

【映像】学生が聞く西淀川大気汚染公害2023 映像の公開

2022年から龍谷大学政策学部清水万由子ゼミ取り組みの一環で、大気汚染公害についてより深く学べる映像を作るために学生がインタビューを行っています。

2023年度にお話をお聞きしたのは大気汚染の被害を受けて公害患者になった須恵佐與子さん。深刻な公害の被害について語ってもらいました。

のどかな環境から大阪に引っ越した後、西淀川に来て、眠れないぐらいひどい咳がでるようになりました。自身の公害病と夫の失明が重なってしまいますが、生きるために一生懸命、家事や育児、仕事を行いました。
西淀川公害を生き抜いた須恵さんの語りをお聴きください。

●【学生が聞く 西淀川大気汚染公害】「西淀川公害を生き抜いた一人の苦悩」
語り手:須恵佐與子さん(西淀川公害患者と家族の会)
聞き手:龍谷大学政策学部 学生
撮影日:2023年10月18日
映像協力 岸本景子
写真:あおぞら財団付属 西淀川・公害と環境資料館エコミューズ所蔵資料
制作・著作 公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)

〇リンク先、所要時間
Youtubeでご覧いただけます。
https://youtu.be/VLzQ9hASlhA?si=RMUhT2Qy0RwwjCjY
約9分

※この動画は地球環境基金の助成を受けて作成しています。


●インタビューの全容(テキスト)は下記のサイトからダウンロードして読むことができます。

▼外部サイト(ストアーズ)
オーラルヒストリー<学生が聞く西淀川大気汚染公害>「西淀川公害を生き抜いた一人の苦悩」須恵佐與子さん

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習 — aozorafoundation 公開日 2024年7月12日5:24 PM

環境省職員環境問題史現地研修(5/30-31)

あおぞら財団では、毎年、環境省職員の「環境問題史現地研修」の受け入れをしています。
昨年度と同じく、一週間前にオンラインによる事前説明会うを行った後、、5/30から5/31に西淀川に来ていただきました。

今年の参加者は33名(引率2名)と過去最多です。

あおぞら財団の設立経緯、活動内容を紹介

一日目の最初は、オリエンテーションとして、プログラム概要説明と自己紹介などを行いました。その後、昔の西淀川の大気汚染に関する写真に基づいて、フォトランゲージがされました。フォトランゲージとは写真を言語化するワークで、各自が昔の大気汚染の実情を想像しながらタイトルを付けます。

フォトランゲージの様子

その後、グループごとにロールプレイを行いました。公害が起きた町を設定し、その町の市役所職員、住んでいる一般住民(公害患者の親)、医者、企業、従業員といった役割を演じてもらいました。実際にその立場で考えてみたら、どの役割でも難しさがあること、特に公害患者が少数になりがちになり意見が言いにくくなり、公害患者に寄り添う難しさを感じてもらいました。

各自の役割の立場で考えて、やりとりをしている様子

アイスブレイクや背景知識の学習が終わりましたら、公害患者の語り部の岡崎久女さんと西淀川公害患者と家族の会の事務局長、上田敏幸さんの話を聞きました。実際に公害被害を経験した患者さんの生の声を聴いて、より確実に公害がもたらした不幸を実感できたのではないでしょうか。

公害患者会の岡崎さんと上田さんに話を伺っている様子

その後、あおぞら財団理事長であり、西淀川大気汚染訴訟弁護団の一員であった村松昭夫弁護士の話を聞きました。公害訴訟に工場や阪神高速道路公団など被告の選定、疾病と公害の因果関係の証明、共同不法行為の証明など色々苦労したことを伺いました。

村松先生が公害訴訟について話している様子

いくつかの講義を経た後、あおぞら財団理事である高田研先生が「紙芝居プレゼンテーション法(KP法)」を紹介しました。各自が紙に「今日の学び・印象に残ったこと」と「もう少し深めたいこと・考えたいこと」などキーワードを書いてもらって、グループ内に共有して、プレゼンテーションをしてもらいました。最後に、全体の共有を行い、一日目の研修は終了しました。

KP法を活用し、グループワークしている様子

研修終了後には、あおぞら財団スタッフや患者会が各グループに入って、交流会が開催されました。

 

二日目は、講義形式ではなく、「公害のデパート」とよばれていた西淀川で実際に歩いて、貸し切りバスで回って、この辺りの実態を知ってもらいます。大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、 悪臭が典型7公害と言われていますが、西淀川にはこの7つの公害により汚染されていました。

あおぞらビル屋上から交通量の多さを確認する

公害資料館「エコミューズ」で過去の公害に関する資料を見る

介護施設「あおぞら苑」の前で公害の碑と集合写真

幹線道路には大型車が多い

国土交通省大阪国道事務所から大気汚染・騒音対策を紹介

堤防から民家が川より低い様子を確認

小降りの中、大野川緑陰道路を歩く

その後、あおぞら財団理事、元神戸製鋼所訴訟担当の山岸公夫さんが、企業側の目線から、西淀川大気汚染公害訴訟をどう見ていたのかという話がされました。本件訴訟をふりかえって、企業側としては不法行為をしていないにも関わらず、公害患者という被害者がいる中で、うまい落としどころが見つかれば…という思いがあったそうです。山岸さんは 時代の屈折点における軋みと捉えていて、トラブル処理の基本となる法律の整備が時代の変化に対応していってほしいと語っていました。

山岸さんによる企業側からみた公害訴訟についてのお話

最後に、この二日間の学びをグループで共有し、プレゼンテーションを目指してワークショップを行いました。

積極的にワークショップをしている様子

その後、「KP法」でプレゼンテーションをしてもらいます。6つのグループがそれぞれの着目点がありますが、全員が「コミュニケーション」の大事さについて言及しました。
公害の和解は、ステークホルダーのコミュニケーションが欠かせません。現在または将来の環境問題に、より広範囲のコミュニケーションこそが解決の糸口ではないかと考えられます。

各自が好きな観点に「いいね」を押している様子

あおぞら財団メンバーがプレゼンテーションにコメントしている様子

【参加者の感想(抜粋)】

  • 今回、岡崎さんが私たちに向き合い、他人に決して知られたくない辛い決断を含めて勇気を振り絞って言葉にしてくださったことで、公害により耐え難い苦しみを味わった方が目の前の一人の人間であること、普通の生活をただ当たり前に送りたかった普通の人であったこと、そしてその苦しみが現在でも続いているということを痛感しました。
  • ロールプレイを通じて、公害が複雑になるのは様々な立場・思いがありそのどれも完全悪ではないこと、また、安易な折衷策は裏目に出る可能性が高いということをよく理解できた。
  • 行政の立場では、法律などの規則を制定し、その範囲内でできることを模索することになるが、当然、地域や個人ごとに事情は異なるため、その中で落としどころを見つける難しさがあると感じた。だからといって、静観するのは間違っており、こと国の行政官として何ができるのかについては真剣に考えなければならないと思った。

(記:あおぞら財団アルバイト王子常)

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