2019年8月6日13:30-17:30
立命館大学法学部の石橋ゼミ18名が西淀川公害裁判のことを学びに来て下さいました。
暑いさなかでしたが、阪神出来島駅からフィールドワークを行いました。
西淀川公害のレクチャー、公害患者さんのお話しを聞きました。
学生から「ぜん息の原因を公害と知ったのはいつか?」という問いがありました。
今回は、法学部の学生さんたちなので、特別に弁護士の村松先生からも講義がありました。
「公害訴訟のような大変な裁判を担当してくれる弁護士を見つめるのは苦労したのでは?」との問いに
村松先生から西淀川は患者会が大阪弁護士会に裁判の働きかけをしたこと、
村松先生としては「社会に役立つために」という心意気で参加されているというお話がありました。
現場を見た経験が、役に立てばと願っています(林)
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2019年8月6日立命館大学石橋ゼミ研修受け入れ
関西学院大学総合政策学部(総合政策演習)の受入れ
2019年6月8日(土)
関西学院大学総合政策学部の総合政策演習(佐山浩先生と学生9名)の受入れを行いました。
西淀川フィールドワークの後、西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)にて、西淀川大気汚染公害についての講義を行い、公害患者さん(岡崎久女さん)からのお話をお聞きするプログラムでした。
まずは、午後1時に阪神なんば線「出来島」駅改札に集合し、スタッフの栗本の引率によるフィールドワークをスタート。
国道43号線
大型車が多く排気ガスと工場の煙による複合大気汚染の原因となったこの道路対策について解説。
千北診療所
1969年創設の公害医療センター。西淀川公害患者と家族の会の事務所も併設され、公害病患者の治療の拠点となる。
あおぞら苑(地域再生の碑)
裁判の和解金を活用して2006年にオープンしたデイサービスセンター。公害患者の高齢化に伴い、日々の生活援助を目的とする。地域の一般の方も利用している。
神崎川堤防(千北橋通り)
工場用の地下水の汲み上げによって地盤沈下がおき、住宅地が水面より低くなっていることがよくわかります。
大野川緑陰道路
元は中島大水道という人口水路だったが、淀川の改修によって大野川と結合し、排水の不備や捨てゴミが溜っていた。環境改善のために1970~1971年に埋め立てられ、緑に囲まれた歩行者・自転車専用の道路となっている。水質汚濁も酷い川だった当時の写真を見て、学生も驚いていました。
あおぞら財団(西淀川・公害と環境資料館エコミューズ)に到着。
休憩をはさんで、あおぞら財団スタッフの栗本が、西淀川大気汚染公害の歴史、公害環境行政、公害裁判と患者団体の運動、あおぞら財団設立に至る歴史的な流れなどについてのレクチャーを行いました。
公害病による影響として思いつくものとして、学生からは、「仕事に行けない、学校に行けない、運動ができない、子どもに影響する(育児)、差別(地域のイメージが悪くなる、引越し、うつる、不健康地帯という烙印)、経済的に困窮する、医療費がかかる」などの意見が出されました。
次に、公害患者さんのお話として、岡崎久女さんにお話を伺いました。岡崎さんは、23歳のときに、高知県から西淀川へ嫁いで来られて、翌年出産し、25~26歳で、ぜんそくを発病し、長年苦しんで来られました。とくに症状が酷かった最初の5年目頃は、夜寝るときの態勢も横になると気道が狭くなりしんどいため、座ったまま寝ていたことや、通院頻度(週3~4回、点滴または吸入)や、一回の点滴が保険適用でも非常に高額であることなど、色々な面で深刻さがよくわかりました。また息子(次男)さんも公害病認定されているとのことで、親としての思いや、引越しを考えた際、「おかんには故郷があるけど、僕にはここしかない」と言われて、「この地の空気をよくするしかない」との考えに至ったというお話には、とくに考えさせられました。途中から、患者団体の事務局長をされている上田敏幸さんもトークに加わり、色々なデータや署名運動のお話し、現在もぜんそく患者は増えていること、また岡崎さんから色々なお話しを引き出してくださることで、より深く本当の大変さが伝わりました。
学生からも、自分の住む町も被害があることに気づかされたり、実際に家族にぜんそくの方がいて他人事ではないという感想や、自分たちに何ができるか、今後の活動(ソーシャルワーク)につなげていきたいといったような感想もみられました。
長年大変な思いをしてこられた岡崎さんですが、あのとき自殺しなくてよかった、孫もできて幸福と語られ、お話に笑いもあって、ビラ撒きがしんどかったと言いつつも、裁判の原告として仲間と共に長年運動されてきて、色々なつながりや、周囲の支えもあり、現在もあちこち忙しく活動されているご様子が伝わり、何よりも笑顔が一番印象的でした。(田中)
ピースボート リーダーシップトレーニング(4/21)
4月21日(日)、NPOピースボートによるリーダーシップ・トレーニングの一貫として、西淀川大気汚染公害フィールドワークを行いました。参加者は34名でした。
SDGsをテーマとしたリーダーシップトレーニングで、参加者は香港を中心としたアジアの25歳~40歳のユースです。政府関係者、企業人、非営利組織と所属は様々でしたが、平和や環境、人権の問題に関心を持ち、具体的に社会をよくしていきたいと志す人たちです。
ピースボートの担当の畠山さんからは「具体的にどのように問題が解決されてきたかに重点をあてたいので、ぜひ企業と行政の取り組みについて、当事者の視点からお話を聞ければ」という依頼があり、公害患者側の立場、企業の立場、行政(国土交通省)の立場を盛り込んだプログラムになったそうです。
まず参加者の方に西淀川公害について理解してもらうために、あおぞらビルにて「西淀川大気汚染公害と裁判の概要」を栗本から説明しました。1960年代に工場からの排煙で空が灰色になったこと、続いて自動車排ガスが増えていったこと、そして西淀川で大気汚染の被害を訴える人が集まり、西淀川公害裁判にまで発展したことなどを説明しました。
続いて上田敏幸さん(西淀川公害患者と家族の会事務局長)、山岸公夫さん(元神戸製鋼訴訟担当者、あおぞら財団理事)のお二人に登場していただき、当時のお話を伺いました。
上田さんは、出版社に勤めていたときに、患者さんたちの作った本の編集に関わり、それが患者会に係るきっかけになったそうです。本のタイトルを決める際に、「手渡したいのは青い空」というキャッチフレーズをワークショップで考え、それがその後、患者さんの運動のキャッチフレーズになったそうです。上田さんは、参加者に”blue sky for children”と英語で分かりやすく説明されていました。
山岸さんは「西淀川の大気汚染公害の責任は10社の被告だけのものなのか」という疑問など、当時の心境をお話してくださいました。上田さんが話すと、山岸さんがまた企業側の意見を話すという、緊張感のあるやりとりが続き、参加者も集中して聞いていました。
質疑応答では、次のようなやりとりがありました。
Q「公害訴訟においては、測定し、原因を特定することが肝だったということがわかった。その上で、政府と企業と市民が共同して解決に取り組んだのだと思うが、どうやったらスムーズにパートナーシップを築いていけるのだろうか。」
A上田さん「超難問ですね。結論から言うと企業・市民・政府(あるいは自治体)のパートナーシップは必ずしもすぐにうまくいくわけではありません。裁判を和解して21年目なんです。この間、パートナーシップを形成するところに力を注いできました。あおぞら財団が今まさにその仕事の中心になっております。難しいですが、僕自身は希望を失っていないんです。現にこうして山岸さんと隣り合わせで話が出来るというのが、まずひとつの大きな力だと思います。20年前は考えられなかった。ここが出発点だと思ってますし、ここから進歩させていかないと、と思っています。」
A山岸さん「経済成長あるいは個人の所得の向上を目指した結果、その反面として、健康被害や大気汚染というマイナス面が生じる。そのバランスを、国全体としてどうとっていくかが非常に重要です。そのためには困難なことですが、コミュニケーションを繰り返しながら、どの辺りがバランスの良い所なのかを見出して行くということが必要だと思うんです。裁判もそのひとつの手段となり、コミュニケーションの結果、和解に至ったわけです。」「今も上田さんたちは、頑張って発言しておられる。私もそういう頑張りは重要だなと思っておりますので今後とも主張して頂けたらと思うのです。経済成長や環境とか色々な選択肢が出てくる中では、色々な考え方の思想、チーム、グループがある訳で、それぞれの意見を闘わせてそこでどう落とし所を見出すのか、どこでどうバランスを取るのかというコミュニケーションのとり方が重要だと思います。言いっぱなしでもいけないし、言わないのも良くない。みんなで議論してどこに答えを持ってくるかを考えるということが非常に重要だろうと思います。」
この他、「20年間かけて何度も何度もやって、やっと政策に結びついていったというのは成果として素晴らしいと思う一方で、それをもう少し短縮して、苦しみに対してすぐに政策が反映されて改善されていくという仕組みができないものか」「高度経済成長期において公害という形以外に何か開発の負の側面の事例があるのか」など、多くの質問が寄せられました。
時折笑いが湧くくらい和やかなムードでしたが、公害の被害者側と加害者側の対話です。参加者はメモを取ったり体を前のめりにしてお二人の話に熱心に耳を傾けていました。
私自身、公害訴訟の話を聞くのは今回が初めてでした。資料を読んで公害訴訟和解までの道のりを知っていましたが、お二人の話から資料に目を通すだけはわからない何かを感じました。今見える青い空は、上田さんや山岸さんをはじめ、多くの人の手によって守られた空なんだと思いました。
お二人の対談後、バスで淀川通り周辺の住工混在のまちを見学しながら、国道43号線に向かいました。
バスの車内で谷内から、裁判の和解条項に基づき毎年1回、開催されている道路連絡会について説明をしました。
参加者のみなさんをパシャリ
昼食後、国道43号線沿いの出来島小学校前で国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所の方のお話を伺いました。騒音の低減を図るため、高架部などでは遮音壁を設置するなどの取り組みを行っているそうです。また大気浄化のために高活性炭素繊維(ACF)による取り組みもしているそうです。(下の写真参照)
詳しくはこちらを御覧ください⇒ひと・みち・くらし 国土交通省 大阪国道事務所
私は西淀川区在住10年ですが、このような取り組みをしていることは知らなかったです。
私以外にも知らない人は多いのではないでしょうか。
質疑応答の場では、「地域の人の理解があるのか」という質問に対しては、「地域の人々に、道路の環境対策を実施していることが伝わっていない。今後、サインの設置などの広報に取り組む予定である」という回答がありました。
また、「もうすでに環境基準をクリアしているのに、もっとよくしていこうというモチベーションはどこにあるのか?」という質問に対しては、「二酸化窒素の環境基準は0.04~0.06ppmとゾーンになっている。道路連絡会で、患者さんと二酸化窒素は環境基準値のゾーンの下限値を目指すことを約束している。下限値を実現するまで環境対策を続ける」との回答でした。
他に「道路を作るにあたり、周囲の住宅への影響は考えたのか」「環境対策として、化学的な取り組みの他に行っていることはあるのか」「環境対策に毎年どれくらいの費用をかけているか」「大阪で電気自動車の普及率はどれくらいか」など、参加者の多くの関心が寄せられました。
フィールドワークを終えて、参加者の方は船に乗られました。船内でもプログラムは続き、議論を深められるそうです。いってらっしゃ~い!
(アルバイト 東)
環境省研修 2日目(2018年10月12日)
あおぞら財団では、環境省職員を対象とする西淀川・尼崎地域における環境問題史にかかる現地研修の受け入れを行っています。今年度は10月11日から12日にかけて実施し、環境省職員の方15名、環境再生保全機構の方2名、中間貯蔵・環境安全事業株式会社の方3名が参加されました。
研修2日目は、バスで西淀川および尼崎工業地域のフィールドワークを行いました。
歌島橋交差点を出発すると、交通量の多さが実感されます。
西淀川公害裁判和解に伴い、歌島橋交差点をはじめとする4か所に
国土交通省が常時大気測定局を設置していることなどが説明されました。
フィールドワークの途中で、国土交通省大阪事務所の方から、
ロードプライシングをはじめとする環境対策(大気汚染対策・騒音対策)の取り組みについてお話を伺いました。
質疑応答では、交通の転換を促している阪神高速5号湾岸線周辺への環境影響や、エコカーに対する割引は行わないのかといった質問が出ました。
その後、尼崎の工業地帯、中島工業団地を巡りました。
尼崎へ向かう高速道路では、大阪事務所の方から聞いた騒音対策としての防音壁が施されていること、設置された年代や西淀川地区と尼崎地区で装置に違いがあることなどを実際に確認することができました。
西淀川地区、尼崎地区、そして中島工業団地を通って西淀川地区へ戻ってくると、工業地域と住宅地域が近接していること、複雑に入り組んでいることがよく分かります。
昼食後はデイサービスセンターあおぞら苑を訪問しました。
ここからは、3人1組となって『西淀川公害を考える 西淀川公害から考える 西淀川フィールドワークマップ』を手に、あおぞら財団をめざします。
実際に西淀川のまちを歩いて、町並みや公害対策としての緑陰道路を歩いて体感してもらいます。
また、西淀川の好きな所・おすすめの場所、困ったところ・改善したいところについて地域の方にインタビューを行うことも目的の1つです。
あおぞら財団に到着後、各グループのインタビュー結果を共有しました。
地域の方からは、好きなところとして大野川緑陰道路と桜、団地(地域)での行事の多さが挙げられたほか、改善してほしい点として防水対策、バスの本数の少なさが挙がったようです。
こうしたインタビュー報告をまじえながら、藤江事務局長が「西淀川の現状と地域再生のまちづくりについて」講義を行いました。
藤江事務局長の講義に対しては、まちづくりの担い手をどう繋げるか、新しい住民が活躍するにはどうしたらよいかという質問が出されました。
あおぞら財団理事である山岸公夫さんからもお話を伺いました。
「西淀川大気汚染公害訴訟を会社サイドからみる」として、西淀川公害訴訟に携わったご経験、訴訟担当者としての思い、現在の思いをお聞きすることができました。
最後に、2日間の学びをふりかえるワークショップを行いました。
各グループで学びを整理・共有し、プレゼンを作成、「西淀川で得た学び」として発表します。
参加者からは、学びとして、
立場の異なる人びとが、意見交換の積み重ねによって信頼関係を築いていったこと、
「青空を手渡したい」という共通の目標が見つかったことが和解に繋がったこと、
また、今後の課題として、
地元住民の公害に対する意識に温度差があること、問題の風化、
今後起こりえる環境問題に教訓をどう生かすか、
また行政や地域団体それぞれの立場で何を行っていくべきか、
などが挙げられました。
参加者の発表に対し、
藤江事務局長からは「これから仕事で生じた問題に向き合う際にこの研修が生かされてほしい」、
山岸公夫さんからは「ルールがない中で問題が起こり、対立する。参加者はそういう時に活躍すると思うが、対立が激化する前に解決のための手順やルールをつくってほしい」、
上田事務局長からは「大切にしてきたのは対話。対話には相手への尊厳と自分への疑念が必要という。相手をリスペクトする気持ちを持ち、相手と話をすることで“自分が変わらないといけない”と思わないと対話にならない。ぜひ対話を」
といった趣旨のコメントがありました。
環境問題だけでなく、まちづくりを考えていく上で、それぞれの思いを持った立場の異なる人間が対話を重ね、信頼関係を築いていくことの重要性が再認識された研修でした。(北嶋)
中国NGOリーダーの研修をおこないました。
9月21日(金)中国で様々な市民活動をしているNGOリーダーの方19名があおぞら財団に研修に来られました。中国銀杏基金会による研修で、コーディネーターの朱惠文さん(日中市民社会ネットワーク事務局長)は、以前にもあおぞら財団と交流のあった方です。
午前中はあおぞらビル3階のグリーンルームで、あおぞら財団研究員の林が研修の流れ、西淀川公害の歴史と今、あおぞら財団の活動を、映像を写しながら紹介しました。参加された方々は、60年代工場からの煤煙で七色に煙る空の写真に、大気汚染のひどい北京と重ねて見ておられました。
後の質問では「大気汚染のひどい北京との交流はありますか?」「中国語の教材はありますか?」「公害を起こした工場、働いていた人は今どのような状況ですか?」といったものがあり、参加者の方々の環境問題に対する想いの大きさを感じました。他にもあおぞら財団の活動についても「西淀川の状況やイメージが良い方向へ変わってきて、事業も変わってきますか?」「個々のプロジェクトはずっと続くものですか?」等いくつか質問があり、1時間と短い時間の中でも大変興味を持たれた様子でした。
素敵なお土産を頂きました!
その後、5階のあおぞら財団附属「西淀川・公害と環境資料館」(エコミューズ)へ移動して「公害みんなで力をあわせてー大阪・西淀川地域の記録と証言―」のパネルを見学しました。
次は、昼食会場である、あおぞら財団が運営するくじらカフェへ徒歩で向かいます。道中は、住工混在や地盤沈下の状況などを説明しながら、ミニフィールドワークです。
最後に、車の排気ガスをはじめとした道路公害の問題とその対策を学ぶために、バスで国道43号線まで移動しました。中国でも道路公害は深刻な問題です。日本の行政の立場での対策について学びたいというご要望を受けて、国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所にお願いしたところ、環境対策の説明のためにお二人の方が来てくださいました。
今回の視察は、日本の各地を回られるツアーの途中ということで、通訳を挟みながら4時間程度という短い滞在でしたが、少しでもみなさんの今後の活動に活かしていただけると嬉しいです。(記=佐々木・栗本)