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ブログカテゴリー » 資料館(エコミューズ)

公害資料館ネットワークの事務局移転のお知らせ

拝啓
時下ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます
平素は公害資料館ネットワーク及び当財団の活動に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)では、全国の公害資料館が連携し公害の経験を伝えていく公害資料館ネットワークの事務局を2013年12月の結成時より務めてまいりました。
同ネットワークでは、全国の公害地域の取り組みや公害資料館などに関わる方々の情報交流、テーマ別分科会や公害資料館連携フォーラム(年一回)を開催し、多くの方々のご協力を得ながら、「公害を伝える」取り組みを広げています。
活動の進展とともに運営体制についても検討が進められる中、この度、同ネットワーク事務局が水島地域環境再生財団(みずしま財団)に移転されることとなりましたのでお知らせいたします。
あおぞら財団は全国認可の団体として、公害・環境問題資料について広くネットワークを形成するため、1999年から近・現代史研究者、アーキビスト、弁護士をメンバーとした「公害問題資料保存研究会」で議論を積み重ね、2006年には「西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)を開館しました。また、2009~2011年には「公害地域の今を伝えるスタディツアー」を開催し、各地の公害資料館とのつながりを深めてまいりました。公害資料館ネットワークの活動もこうした流れの上に力を注いできたものです。
当財団では、引き続き、同ネットワークの構成団体としてその発展のための活動に取り組んでまいります。
今後とも同ネットワークの活動に一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
敬具

2021年5月
あおぞら財団事務局長 藤江徹

公害資料館ネットワーク事務局(移転先)
〒712-8034 倉敷市水島西栄町13-23
公益財団法人水島地域環境再生財団(みずしま財団)内
TEL 086-440-0121  FAX 086-446-4620  E-mail kougaishiryoukan@gmail.com
https://kougai.info/

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2021年5月19日4:03 PM

とよなか国際交流協会職員研修(2/3)

2021年2月3日、とよなか国際交流協会の職員研修を受け入れました。参加者は11人、屋外でのフィールドワーク中も原則、マスク着用の上、研修室では間隔を空けて着席するという形で感染症対策に配慮して実施しました。
インターンの鹿さんのレポートと、参加者のみなさんのご感想を紹介します。

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今回、あおぞら財団の研修を体験しに来ていただいていたのは、とよなか国際交流センターの職員さんたちです。
阪神出来島駅から出発し、歩きながら説明を進めていきました。あおぞら財団の栗本は、出来島小学校前でマイクをつけながら、周辺にあった大気汚染や騒音の問題を紹介した後、道路周辺の環境汚染対策の設備をみんなで探すよう呼びかけましました。普通に見える学校の壁は光触媒を使ってNOxを付着させるものであり、地面の舗装も騒音を低減させる素材であるなど、目立たないものが日常の環境汚染の減軽のためのものであることに、みんな感心しました。
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大和田の方に歩いていく途中、ちょくちょく海抜が書かれている表示が見られました。時に海抜がマイナス1メートルであったりとか、地盤沈下の様子や、浸水した場合の厳しさがわかりました。特に神崎川の上の橋に立っていると、川より両岸の道路の方が低いことがはっきり見えます。
あっという間に昼頃になり、昼食のためハラールレストランに行きました。近くにマスジド(モスク)と売店もあって、移民のコミュニティの生活が垣間見えます。
少し売店での買い物を含めて休憩した後に、静かな住宅街を通って大野川緑陰道路に入りました。川を埋めて作った道路が驚きで、緑が溢れる環境にみんな感心しました。
あおぞら財団に戻って、公害患者の池永末子さんから当時の状況や病気の話を聞かせてもらいました。
資料館を見学した後、最後に、1日のふりかえりとして、3つのグループに分かれて、みんな自分の思ったキーワードを付箋に書いて、白い紙に貼りながら説明していました。
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みなさんのお話を聞きながら、自分の中にも2つのキーワードが浮かびました。
一つ目は「変化」です。あおぞら財団でのインターンを始めから半年になった今でも、緑陰道路の建設経緯に感心します。過去40年の変化が大きい所、その背景はたくさんの住民の努力がありました。池永さんのお話によりますと、当時の公害患者は自分や家族のためのエネルギーが使い切れないようにあったのだと感じました。そして今になっても、池永さんは、子ども食堂への手伝いなど、ご高齢にも関わらず、自分のできることをやり続けています。従って、「変化」については、変わったのは環境や環境への認識があるのに対し、変わっていないのは人の心であると思います。
この変わってない心につながっている二つ目のキーワードは「パワー」です。国民が大手企業、さらに国を相手に自分の主張を言い続けた20年。中に非特異性疾患である大気汚染の公害病の認定に協力した地元の医師たちや、汚染源の追跡に証拠集めた弁護士たち、そして裁判を一から勉強し、自分の境遇を全国に知らせていた住民たちがいた。このパワーは今でも違った分野で続いています。公害患者たちは今も公害の歴史などを若い世代に話し続けていて、そしてこのあおぞら財団も、環境保護などの事業を通じて、西淀川区内だけでなく、国内外の地域間の交流を続けています。
私にとって2回目のフィールドワーク体験でありますが、新しく学んだ事が増えました。
(インターン生 鹿)

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◆参加者の感想(抜粋)
・今回の研修では、西淀川の公害を通じて、環境、まちづくり、防災、外国人、教育、世代間交流…etc、人権にかかわる問題の交差性を実感しました。このあたり、普段からもっと意識したいなぁと思います。

・池永さんのお話は素朴で飾らない中にもぶれない意志、思いも感じることができました。このパワーはどこからくるものなのかと思いましたが、支える人びと、共に闘う仲間がいることは大きいなぁと感じました。

・特に池永さんには、コロナ禍の中、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。私自身、知識としてしか持ち合わせていなかった公害の問題が、身に染み込んだように思います。“昔の話”“違う地域の話”ではなく、現在、自分にもかかわる大きな問題であると感じることができました。

・生まれ育った場所に住み続ける/続けたいだけなのに、それをするためには闘い続けなければならないこと。20年の裁判を続けられた理由、モチベーションについて(当日もお話いただきましたが)もっと知りたいと思いました。当事者でない側が学び、日常の意識を変えていきたいと思いました。

・池永さんのお話、しなやかな強さを感じました。“自分たちが動かねば!”という強い思いとともに、当事者が動かなければ動かない社会の在り方を再度見つめ直すことができました。“公害”はこれまで、教科書の中の話のように感じていましたが、池永さんのたすきを私自身がちゃんと受け取らないとと思いました。

・豊中市内も自動車の交通量が多いです。研修後、ネットでPM2.5の数値を調べたりしてみました。自分が在職・在住している町の環境にももっと関心を持たなくてはいけないと気づかされました。

・20年かけて、粘り強く勝ち取った。本当にすごいなと思いますし、励まされます。さらに闘って倒すのではなく闘ってつながる。今もいろいろな地域とつながる。心が震えました。

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2021年2月16日4:44 PM

公害資料館ネットワーク【パネル展示(12/1-25)&クロストーク(12/19)】が開催されます。

あおぞら財団が事務局をつとめる公害資料館ネットワークの取り組みです。
※公害資料館ネットワークの記事の転載です。http://kougai.info/nagasaki

パネル展示(12/1-25)&クロストーク(12/19)

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今年度は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、フォーラムを開催することができませんでした。
当初、開催予定であった長崎において、以下のパネル展示ならびにトークイベントを企画しました。トークイベントは、オンラインでの参加もできますので、ぜひご参加ください。(申込はこちら

*本イベントは、独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金の助成を活用し開催しています。

【クロストーク】
“ナガサキピースミュージアム×公害資料館”

展示会場であるナガサキピースミュージアムは、美しい自然や子どもたちの笑顔、音楽などを通し、平和への一歩を提案している「平和文化型ミュージアム」です。歌手・さだまさし氏の呼びかけによって1995年に発足したナガサキピーススフィア貝の火運動が母体となり、多くの方の募金によって、2003年にミュージアムが建設されました。
このイベントでは、ナガサキピースミュージアムの活動とその特色を、専務理事の増川雅一さんにお話しいただきながら、公害資料館ネットワークの活動との接点を考えてみたいと思います。今回展示するパネルができるまでの経緯もお話しします。

◆日時:2020年12月19日(土)14:00~15:30
◆出演
大串秀人さん(ナガサキピースミュージアム)*チラシから変更になっています。
林美帆さん(公害資料館ネットワーク)
聞き手:友澤悠季さん(長崎大学環境科学部)
◆開催方法
会場(少人数予約制)+オンライン配信(50名程度)

◆申込方法(申込〆切:12月17日(木))
〔オンライン配信〕
以下のサイトから、必要事項をご記入の上、お申込みください。
ここをクリックしてお申込みください。

〔会場での参加の場合〕
ナガサキピースミュージアムに電話、メールにてお申込みください。小さな会場のため申込が多い場合はオンライン参加をお願いすることがあります。
<ナガサキピースミュージアム>
電話:095-818-4247
メール:museum@nagasakips.com
【パネル展示】
影、光る―全国公害資料館からのメッセージ―
◆期間:2020年12月1日(火)~12月25日(金) 9:30-17:30
*月曜休館(12月7・14・21日)、最終日は14:00まで
◆入館料:無料
◆会場:ナガサキピースミュージアム(http://www.nagasakips.com/
地図 https://goo.gl/maps/b6LBEkuS6GvBAnbX8

主催
公害資料館連携フォーラムin長崎実行委員会
共催
公害資料館ネットワーク
協力
地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
●お問合せ
公害資料館ネットワーク 事務局(あおぞら財団内)
E-mail kougaishiryoukan+forum@gmail.com
〒555-0013 大阪市西淀川区千舟1丁目1番1号あおぞらビル4階
TEL 06-6475-8885  FAX 06-6478-5885

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,イベント案内,事務局,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2020年12月9日11:57 AM

京都教育大学社会学ゼミ フィールドワーク受け入れ(11/18)

11月18日に京都教育大学 土屋ゼミ(学生12名)を対象にフィールドワークを行いました。
テーマは「西淀川大気汚染公害」です。フィールドワーク後には公害患者さんのお話・ワークショップ「あなたのまちで公害が起きたら」を実施し、一日を通して西淀川を学んでもらう構成となっています。

13時に出来島駅を出発し、国道43号線を目指します。

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国道43号線は、当時大型車の通過交通が多く、その自動車排気ガスと工場の煙が西淀川における複合大気汚染の原因となりました。現在は遮音壁や、高活性炭素繊維で排気を浄化するパネルの設置、街路樹など様々な公害対策がなされています。

出来島小学校を通って千北診療所、あおぞら苑へ向かいます。国道43号線から道を外れ、住宅地に入ると自動車の移動音が気にならなくなりました。43号線ではスピーカーを使用して説明してましたが、ここからは外しての説明です。静かな住宅地と比べれば道路沿いは対策がなされていても、今でも音が気になります。それを考えれば当時、生活への影響がどのようなものであったか想像できました。
千北診療所は初代の公害医療センターが設置された診療所です。西淀川公害患者と家族の会の事務所も併設され、公害病患者の治療の拠点だった病院です。拠点であったこの診療所は、患者さんたちにとって医療面でも精神面でも支えになっていたのではないでしょうか。

あおぞら苑は公害患者の高齢化に伴う日々の生活援助を目的として2006年にオープンしたデイサービスセンターです。公害患者だけでなく地域の方々も利用し、人気があるそうです。そばの記念碑には「公害と闘い環境再生の夢を」という滋賀大学前学長の宮本憲一先生の文字と、公害裁判についての文面が記されています。
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途中、千北橋から神崎川を眺め、川の水位を確認しました。

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橋から住宅地と川の水位を見比べると、住宅地が川より少し低い位置にあります。西淀川は海抜ゼロメートル地域が多く、水害に弱いことがここでわかります。

 

大和田街道を進み、大野川緑陰道路へ。

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大野川緑陰道路は、大野川と中島大水道の一部が埋め立てられてできた自転車・歩行者専用道路です。自転車路は川を想起させる水色、歩道は暖色となっています。緑蔭道路から上を見ると橋が架かっているのがよくわかり、かつて川であった名残が各所にあります。大野川は工業化に伴い、汚染されドブ川となりました。一時はこの川を高速道路にするという動きもありましたが、住民運動により今の緑あふれる緑陰道路となりました。

緑陰道路を少し散策し、財団へ向かいます。

14時30分過ぎに財団5階にある公害と環境資料館「エコミューズ」の見学を行い、当時の資料などを見てもらいました。
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見学の様子
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資料を熱心に見てくれました
15時に3階へ移動し、公害患者である岡崎久女さんのお話を伺いました。上田敏幸さんも同席されました。
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久女さんは14~15歳で高知県から尼崎市に働きに出、23歳での結婚を機に西淀川に越してきたそうです。
高知にいた時より風邪をよくひくようになったそうです。3年が経った頃、なにをしているわけでもないときに息がしにくくなり、その夜の12時頃千北診療所へ行き、公害病だとわかりました。薬の副作用がひどく、歩くことすらままならない状況で子育ても重なり、苦しかったといいます。現在でも最低でも週に一度は通院しており、「苦しみと闘い、今も闘っているけれど、今は上手くつきあっている」と久女さんは言います。

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質疑応答では、以下のやり取りがありました。
Q地域に対しての忌避感はありましたか。土地を変える(引っ越す)という選択肢はありましたか。

久女さんの回答:ここ(西淀川)に嫁いできたわけだから(ここで暮らそうと思っていた)。土地を変えたら自分の症状に対応してくれる新しいお医者さんを探さないといけないのも残った理由。ただ、子どもが高校に進学する際、ここを出たいか聞いたら「おかんには別にふるさとがあるけど、おれのふるさとはここや」と答えられ、思いとどまった。

上田さんの回答:患者全体の傾向として引っ越さない理由は2つある。1つは経済的な理由で患者さんはお年寄りや子どもが多いし生活が目一杯だった。もう1つは医療体制。喘息など、公害病に対応できる医療機関がある場所がなかなかない。西淀川は医療体制がしっかりしていた。

Q公害患者ということに関して、何か周りからされて嫌だったことや良かったことはありますか。
久女さんの回答:そもそも「公害病」ということは当時まわりに黙っていた。

上田さんの回答:公害患者であることが不利益であると考え、認定を受けなかった潜在患者は多いし、普通だった。また学校で子どもたちが体育や林間学校、修学旅行に参加しづらく苦労していた。

 

西淀川大気汚染公害に関する講義のあと、学生さんにワークショップ「あなたのまちで公害が起きたら」を体験してもらいました。これはあおぞら財団の開発したロールプレイ教材で、「多様な立場から社会課題を捉える」ことをテーマに203x年に自分のまちで公害が起きたことを想定に、与えられた役割を演じ、話し合うものです。(詳細はコチラ)今回は6人でグループに分かれ、与えれた役割を演じ、公害対策に向け合意形成を図りました。

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ワークショップの様子

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ワークショップのまとめとして話し合いで出た意見を簡単にご紹介します。
・調査はX社のデータに基づいていたので第三者による調査をする。
・公害の原因がわからないこと自体が不安を生んでいるのではないか。
・今まであった公害にとらわれず、もう一度調査をしてみてはどうか。

など、実際にシミュレーションをすることで当時の様子を想像することができました。

学生のみなさんの感想からいくつかご紹介します。

・学校教育では主に四大公害しか教えることがないので、今後教員として働く身として、よりローカルな公害問題にも注目して子どもたちには教えていきたい。
・実際に、被害者のお話を聞くことができて、辛さというものを実感することができました。
・様々な人が住む地域で実際に苦しんだ人、苦しみを知らない人が共に生活をしている。平凡な毎日と思って日々を過ごすのではなく、みんなにとってよりよい街にするために考え続けることが必要だと思う。
・社会の中には様々な立場の人がいる。強い/弱いなどそれぞれの立場があるからこそ問題も複雑になる。だからこそ社会を動かす責任をもつ立場である政府には慎重に議論してもらいたい。
・ロールプレイで起こった疑問から、実際に起こった過去の事例につなげることで、生徒の興味を引っぱれるなと思ったので、活用したい。

以上、京都教育大学社会学ゼミフィールドワーク受け入れの報告でした。

(学生アルバイト 東)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2020年11月25日11:47 AM

千里高校国際文化科の授業を実施しました(11/9-10)

大阪府立千里高校の国際文化科1年生4クラスを対象として、西淀川公害の授業を実施しました。

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この授業は2015年度から毎年、実施しているものです。「多様な立場から社会課題を捉える」ことをテーマに、あおぞら財団の開発したロールプレイ教材「あなたのまちで公害が起きたら?」を活用しています。(教材の概要はコチラ

2015~2017年度の3ヶ年は、1コマの授業の中で、ロールプレイを実施し、西淀川公害の解決までの流れを簡単にお話していましたが、20018年度からは、千里高校の教員のみなさんが事前にロールプレイ教材を使った授業を実施し、翌週に、あおぞら財団から、西淀川公害の和解に至るまでの経緯と日本の公害対策の変遷について講義を行う形になっています。(2018年度の実施状況については、千里高校のサイトでご紹介いただきました)。

あおぞら財団担当の授業では、冒頭に、ロールプレイの「ふりかえりシート」の感想をいくつかピックアップしてコメントします。
生徒のみなさんの多くは、ロールプレイを通して、家族が病気になった人の「一度、(原因だと思われる)工場の操業を止めて調べてほしい」という主張と、環境基準は守っている工場の経営者の主張など、異なる立場の意見を出し合って合意形成を行うことの難しさを体感します。
例年の感想の傾向として、「合意形成のためには冷静に話し合うことが大切」「役所は中立的な立場であるから難しい」といった意見が出されます。それに対して、被害を受けた立場で冷静に話し合うのはとても難しいのではないのではないだろうか、「中立」であるより「公正」であることが大切ではないだろうか、といった問いかけをしていきます。
また、病気と大気汚染物質の因果関係がすぐには明らかにできないことから、「原因が特定できないのに、工場を悪者扱いのようにするのはどうか」といった感想も出される一方、「ひょっとしたら排出量の少ないときに調査をしたため問題が明らかにならなかったのではないか」といったクリティカルな疑問も出されます。
このように、ロールプレイを通して様々な可能性への想像力を膨らませ、解決について考えてみた生徒たちに対して、実際の大気汚染公害をめぐる環境対策の変遷や裁判の経過を説明していきます。

自分たちの暮らす大阪で、実際に起きた大気汚染公害という課題について、20年におよぶ裁判を経て、西淀川の公害患者たちが「地域再生」という提案を行い、解決をしたという事実から、生徒は自分たちが課題に直面した際、どのような創造的な提案を行うことができるのか、考えを深めていきます。
西淀川の「地域再生」という提案と、今、世界共通の目標として掲げられているSDGsには、異なる立場の人も共に取り組むべき目標という意味で、共通点があると言えるのではないでしょうか。
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生徒のみなさんは、この後、自らが設定した課題について探究を深める学びに取り組んでいきます。
西淀川公害の歴史から、生徒のみなさんが多くを学びとっていただくことを願っています。(栗本)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,西淀川公害授業 — aozorafoundation 公開日 2020年11月19日5:17 PM
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