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ブログカテゴリー » 資料館(エコミューズ)

環境省職員 現地研修受入 1日目(10/6)

あおぞら財団ではここ数年、毎年、環境省職員環境問題史現地研修の受け入れを行っています。今回の研修は10月6日~7日にかけて行われ、環境省職員の方々が21名参加されました。公害患者の岡崎久女さん、森脇君雄さん、弁護団の村松昭夫先生のお話、西淀川のフィールドワークなど2日間に分けて研修が行われました。

まずは自己紹介から。

お名前、担当業務、今回の研修に期待することを紙に書いて発表します。

お名前、担当業務、今回の研修に期待することを紙に書いて発表します。

今回の研修に期待することとして、今回の研修で現場に行ってみたい、患者さんの声を聞いてみたいという意見が多いようでした。

あおぞら財団の林による講義は「日本の公害を市民運動から見る 西淀川を足場として」というテーマで、「戦前の公害といえば?」という問いかけからはじまりました。全国の公害と公害訴訟の話から、西淀川の歴史と公害や、あおぞら財団の理念について説明されました。西淀川の裁判では孫や子へ良い環境を手渡すことを目標とし、西淀川公害裁判は和解のスタンダードな道を作ったと述べました。

説明をする林さん

説明をする林さん

林さんの解説の次には公害患者の語り部・岡崎久女さんのお話がありました。

現在の「西淀川公害患者と家族の会」事務局長・上田敏幸さんも来てくださいました。

岡崎さんと上田さん

岡崎さんは高知県から嫁いで来られ、1976年に、公害病の患者認定を受けられた方です。当時の西淀川の環境、とつぜん始まった喘息の辛い症状や、病気から起こった様々な辛い体験、息子さんも公害患者となったこと、裁判の原告となって活動したこと等を語ってくださいました。

林が質問していく形で、お話をしてくださいました。いくつかピックアップしたいと思います。

林:公害被害者総行動等で環境省に行ったとき環境省の人々に対してお話をするが、思うことは?

岡崎:いまだに重い病気の患者が増えているということが気がかりだ。公害健康被害補償法(公健法)で未認定の彼らは高額な医療費がかかるため、薬だけでも無料にならないか、助けてあげて欲しい。

林:公健法に助けられていると岡崎さんが思う部分は?

岡崎:入院したり夫も仕事がなくなり、自分もパートで働いていたが給料も安く長時間働けなかった。補償費をもらっていたことで非常に助かった。

たすきをかけてお話をする岡崎さん。今ではたすきをかけると話しやすくなると仰っていました

【質疑応答】

Q:町が嫌になったり引越そうとは考えなかったか?

A:息子が進学する時に引越そうかとも考えた。しかし息子に「おかんには田舎があるけど、俺にはここがふるさとやぞ」と言われたことで、この西淀川を良いところにしなければと決心した。

(補足)
上田:西淀川の特徴として、患者が組織をつくるのに医師も協力していたため、自分たちの症状や日常の状況を知って適切に対応してくれる医療の体制が整っていたことが挙げられる。これらの理由から多くの患者が移住しなかった。子ども・老人という移動そのものが難しい人がまず公害の被害を受けた。

林:公害の喘息に対応できる医者が引越し先の地域にいるとは限らない。(他地域の病院では)喘息の薬が非常に強いことに驚く医者もいる。

次は「西淀川公害患者と家族の会」の初代事務局長、森脇君雄さんのお話です。現在は会長をされています。森脇さんご自身も公害患者として認定を受けておられます。

森脇さんはどのように患者会を運営してきたか、環境省との関係等についてお話してくださいました。

お話をされる森脇さん

森脇さんは、公害被害者総行動で全国の主張をまとめ、1回~40回までの大臣交渉を全て行ってきたそうです。

環境庁(当時)の橋本道夫さんが公害健康被害補償法を作るときに全国の患者さんを集め意見を聞いた、それが全国の患者会をつくるきっかけとなったと仰っていました。

西淀川の裁判(1978年提訴)を起こしたことによって環境省との関係が悪化したこと。西淀川公害裁判後、環境省は二酸化窒素(NO2)の環境基準を緩和します。この環境基準の緩和に関しては、患者側は運動や疫学調査により、環境基準緩和の間違いを指摘し、対抗したとのことでした。次に指定地域解除により公害健康被害補償法で新しい公害認定患者を認めないようにしようという主張がおこります。そして1988年、強引に大気汚染の指定地域が解除されました。これも環境省との一つの対決だったそうです。指定地域解除後もぜんそくの患者さんは増えており、この未認定患者の人達に対して何ができるかが今でも課題として残っています。環境省と公害患者側が対話できるようになったのは西淀川の裁判が解決したときだった、とのことでした。

【質疑応答】

Q:全国の患者さんを取りまとめてきたというお話があったが、各団体それぞれの被害や考えは違うと思う。それを取りまとめるのは大変だったのでは?

A:要求を大事にすること、出てきた問題に対する学習、会議をして皆の意見をまとめて実践をするということを中心にまとめる。

Q:森脇さんは環境省と患者さん達の団体の間のコーディネーターという感じか。

A:結果としてそうなった。調整役をずっとしている。双方がうまくいくように話している。話をするときは真意は絶対に曲げない、しかし話が広がった分も真意に含めるようにしている。

皆さん熱心に聞き入っています。

皆さん熱心に聞き入っています。

森脇さんのお話で紆余曲折を経ながら環境省と患者さん達が付き合ってきたこと、患者さんたちの運動への取り組みを理解することができました。

その後、あおぞら財団の現理事長である村松昭夫先生のお話がありました。

西淀川の公害大気汚染裁判及び環境省との関わりなどについて話してくださいました。

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会場を5階のエコミューズに移して行いました

 

お話をされる村松先生。

お話をされる村松先生。

西淀川の公害訴訟裁判は、法の専門家等から見ても勝つのが難しいといわれた裁判だったそうで、弁護士の方は皆手弁当で協力したそうです。

日本において大気汚染裁判の判決が行政の施策・政策に反映されたのは、患者さん達の「自分たちが味わった被害を子や孫に味あわせたくない」との想い・目的が積み重なり、行政もそれを真摯に受け止めたからではないかと村松先生は仰っていました。日本には環境公益訴訟がないため被害者が立ち上がり、公益的な役割を果たさざるをえなかった面もあった、環境公益訴訟がないのは日本の司法の遅れた部分であり課題であると述べられていました。

【質疑応答】

Q:西淀川裁判では様々な専門家が裁判に関係していたが、当時不利と思われていた裁判に彼らが協力した理由は何か。

A:戦後の再出発の時に、戦争に対する反省と、新しく憲法ができたことによって、学問や研究は何のためのものなのか考える研究者が育っていき、被害者や住民のためにという人が増えた。そのような思いを持った人々が理不尽な公害を見たとき、裁判に協力しようと思ったのではないか。

Q:日本に環境公益訴訟がないのはなぜか。

A:最大の要因は環境に対する意識の遅れではないか。日本は、環境よりも経済の側面が強いので環境公益訴訟があると、様々なことが裁判の場で訴えられるためそれに対する恐れがある。環境公益訴訟を求める運動も少ない。

最後に一日のまとめを行い、気づいたことを話し合って、2日目に向けて、問題意識の近い人達でグループごとに分かれました。

皆さん熱心に議論しています。

皆さん熱心に議論しています。

二日目は西淀川のフィールドワークが中心の研修となります。

 

私が研修補佐をするのは今回で二回目です。多岐にわたった非常に「濃い」内容の一日でした。環境基準の規制緩和や公害健康被害補償法の指定地域解除に対する反対運動など、現在私が資料整理で取り扱っている資料に関連するお話もあり、交渉相手の印象、人柄など資料だけではわからなかったことが聞けて、興味深かったです。

(村山)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2016年10月20日3:02 PM

第4回公害資料館連携フォーラムin水俣(12/16-18)

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第4回公害資料館連携フォーラムin水俣

日時:2016年12月16日(金)~18日(日)
会場:水俣市立水俣病資料館 ほか
http://www.minamata195651.jp/

参加者募集中!

*フィールドワークは先着80名のためお早めに

詳細はこちら:https://www.facebook.com/events/291354977916094/
ちらしはこちら:http://kougai.info/wp-content/uploads/2016/10/minamata.pdf
WEBからのお申し込みはこちら:
https://drive.google.com/open?id=1wEjxONJueklEcN7rDubKdiO6teDxAIFr6vIUfZo5NOk
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
水俣で築いてきた公害を伝える取り組みを学び、
他地域の公害地域再生の取り組みを共有することで、
これからの公害教育と公害資料館の可能性について議論します。
多くの方のご参加をお待ちしています。
第4回公害資料館連携フォーラムin水俣

◆日時:2016年12月16日(金)~18日(日)
◆会場:水俣市立水俣病資料館 ほか

◆参加費:
・基調講演のみ参加の方 500円(資料代)
・基調講演+分科会参加の方 3,500円(資料代含む)

・フィールドワーク参加費 5,000円

◆スケジュール:

12月16日(金)
13:30-17:00 フィールドワーク 2コース(先着80名)/新水俣駅発

12月17日(土)
13:00-15:00 基調講演
「無名な者たちの公共性 私の小さな影響力について」
望月 優大さん(スマートニュース株式会社マネージャ グロース/パブリック担当)

15:15-17:45 フォーラム 分科会1
18:30-20:30 交流会(会場 湯の児スペイン村福田農場)

12月18日(日)
9:30-12:00 フォーラム 分科会2
13:00-15:00 フォーラム 全体会

◆申込方法
WEB申込フォーム(https://drive.google.com/open?id=1wEjxONJueklEcN7rDubKdiO6teDxAIFr6vIUfZo5NOk
からお申し込みになるか
以下の内容を現地実行委員事務局へご連絡ください。
メール: mimuseum195651@gmail.com
——————————————–
氏名(ふりがな)
所属
住所 〒
電話/FAX
メールアドレス

*基調講演 参加・不参加

*フォーラム参加ご希望の分科会名と番号(下記参照・人数調整あり)
17日  第1希望      第2希望
18日  第1希望      第2希望

*フィールドワーク参加申込(16日 5千円)
申し込む   →2コースからお選びください
(1)現在的な課題として水俣病を考えるコース
(2)JNC(チッソ)見学コース
申し込まない

*交流会 (17日 4千円)
参加する / 参加しない
——————————————–
◆分科会内容

[12/17]
17-1[公害入門]公害とは何か?日本公害史の教訓
17-2[資料保存]公害資料の整理と公開
17-3[地域づくり]公害地域の関係性をつくる
17-4[学校1]水俣における様々なアプローチの公害教育の実践から学ぶ

[12/18]
18-1 [展示]展示を通じて他者の視点を知る・感じる
18-2 [企業]企業と考える水俣の未来
18-3[教育旅行]公害からの学びをプロデュース
18-4[学校2]公害教育解体新書

—————-
17-1 【公害入門】公害とは何か-日本公害史の教訓
ゲスト:宮本憲一(滋賀大学名誉教授・大阪市立大学名誉教授)
公害研究の第一人者である宮本憲一先生から、
公害問題の過去から現在まで「公害の基本」を
お話しいただきます。
公害関係の業務を担当される行政担当者や、
これから公害教育に取り組みたい人におすすめの講座です。

17-2 【資料保存】公害資料の整理と公開
ゲスト:水俣市立水俣病資料館、
国立水俣病総合研究センター水俣病情報センター
水俣病センター相思社水俣病歴史考証館 葛西伸夫氏
熊本学園大学水俣学研究センター 井上ゆかり氏
公害をめぐって多様な資料がつくられました。
この整理と公開は公害資料館に課せられた使命の一つです。
本分科会では、熊本水俣病の資料を収蔵する
各機関の取り組みを通して、公害資料の整理と公開のあり方について考えます。

17-3 【地域づくり】公害地域の関係性をつくる
ゲスト:水俣の企業人
公害地域からの報告
被害者・加害者・地域住民それぞれの思いや考え、
認識の違いによる困難と向き合いつつ、
対話や協働の関係性をどのようにつくりだしていくのか。
現場で垣間みられる前進の動きに着目して検討していきます。

17-4 【学校1】水俣における様々なアプローチの公害教育の実践から学ぶ
ゲスト:梅田 卓治(水俣芦北公害研究サークル代表)
松本 広隆(水俣市立袋中学校教諭)
水俣の地元教員有志によって40年活動を重ねる
「水俣芦北公害研究サークル」。
水俣市教育委員会発行の副読本を活用した環境教育としての実践。
本分科会では水俣病に関する二つの異なる視点の実践報告を受け議論します。

18-1 【展示】展示を通じて他者の視点を知る・感じる
ゲスト:庄中 雅子(国立科学博物館)
展示に込められたメッセージは、
見る人によって受け取り方や感じ方がそれぞれ違います。
言葉をもとに、参加される皆さんと展示をじっくり見ることで、他者の視点を共有し、展示に対する新しい学びを共有します。

18-2 【企業】企業と考える水俣の未来
ゲスト:渡邊 輝樹(エコタウン協議会会長、アクトビーリサイクリング㈱取締役)
福田 豊樹(㈱福田農場ワイナリー代表取締役)
企業は地域社会の一員として、環境やまちづくりなど、
社会への貢献が求められる時代です。
水俣病の経験を経て、水俣の地元企業では
どのような試みがなされているでしょうか。
地域に対する思いとその活動について報告を受けます。

18-3 【教育旅行】公害からの学びをプロデュース
ゲスト:吉永 利夫(株式会社ミナコレ代表取締役)
水俣には各地から、様々な世代の人々が学びを求めて訪れます。人々を惹きつけ、地域の協力者を巻き込む教育旅行はどのように組み立てられているのでしょう。
現在の課題から今後の目指すべき方向も含めて学んでいきます。

18-4 【学校2】公害教育解体新書
ゲスト:波多野 孝(元小学校教員・あがのがわ環境学舎)
かつて「公害列島日本」と言われるほど全国で引き起こされた公害。その影響に比して公害教育は必ずしも広く取り組まれはしませんでした。
それはなぜか。
手探りで公害教育の普及を試みた現場からの報告を受け考えます。

◆その他
・宿泊や交通の手配などは、ご自身でお早めにご準備ください。
http://kougai.info/wp-content/uploads/2016/10/yadominamata-6.pdf

・個人情報は水俣市立水俣病資料館にて厳重に管理し、
イベントの連絡以外の目的では使用いたしません。

・適宜、情報は以下に更新しますので、あわせてご覧ください
https://www.facebook.com/events/291354977916094/

Filed under: イベント案内,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2016年10月17日4:57 PM

資料館10周年企画の研究会、第3回目を開きました(9/1)

あおぞら財団付属の西淀川・公害と環境資料館エコミューズが10周年記念企画の研究会が、9月1日(木)に行われました。

今回はあおぞら財団職員・スタッフ、エコミューズ館長小田さん、大阪市立大学除本教授とそのゼミ生、また西淀川公害患者と家族の会会長森脇さんの7名での会議が行われました。
今回の会議では研究会をどのような方向へと持っていくかという話し合いが行われました。
「西淀川の特長ってなんだろう?」といった疑問から、森脇さんの経歴は一体どうなっていたのだろう!ということで年表を見てみたりもしました。
また、今後どのようなことについて調べていこうかという話でも盛り上がっていきました。

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今回もあおぞら財団5階、エコミューズにて行われました。

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西淀川公害患者と家族の会会長、森脇さんが今回も来てくれました!

 

また、西淀川公害裁判の頃に取った古いテープ(実際に1980年のもの!)も文字起こしする必要があるだろうといった話もしました。
古い古いテープなので、一度何か違うものに焼かないといけませんねといった話も話題に上がっていました。
他にもエコミューズで所蔵している資料の一部を見ながら相談をすることで、6階の書庫に保存されている資料を見る良いきっかけにもなりました。

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あおぞら財団6階の書庫にある資料の一部もみんなで確認をしています。

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真剣な様子で所蔵資料を読んでいます。

 

いろいろと話が盛り上がってしまいましたが、次の研究会の予定を立ててこの日は終わりになりました。
森脇さんからも裁判当時の聞いたことがない話や、いろいろな意見で盛り上がった研究会でした。
西淀川を、公害を通してではなく、また少し違った視点で見えてくるのはとても楽しかったです。

(松ヶ平)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2016年9月23日10:06 AM

西淀川社会福祉協議会で研修を実施しました(8/31)

8月31日(水)に西淀川区社会福祉協議会で、研修を行いました。

 

今回は西淀川区の歴史がテーマの研修となりました。13:30からの研修には23人、15:30からの研修には8人、参加者は合計31人となりました。
1時間半の研修を今回は2回行うという形です。
研修として使用した会議室には、あおぞら財団5階にあるエコミューズに展示してあるパネルと同じものを展示していただきました。ずらりと並ぶパネルを参加者の方々は研修の始まる前や、終わった後に読んでいました。パネルは研修が終わった後も、しばらく西淀川区社会福祉協議会で展示をしてくださるそうです。

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エコミューズにあるものと同じパネルです。

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パネルがずらりと並んでいます。

 

講師であるあおぞら財団の林さんの自己紹介が終わると、クイズが行われました。
「江戸時代、西淀川区には「村」はいくつあったでしょうか?ただし、新田は除きます!」

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グループで村の数を検討している様子です。

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正解は10村でした。

テーブルごとにグループになってみんなでいくつ村があったのか書き出し始めました。各グループに数とどんな村があったか名前を上げていってもらうと、他の参加者から「そんな村はないわ~」や「あ、その地名は忘れてた!」と声が上がりました。
実は新田だったと思われる村を含め、10つの村があったのだと林さんから説明をされると驚いたり、納得の声が上がったりしました。

 

古代から戦国時代までの西淀川の話には、全く知らなかった西淀川の歴史に驚いた表情を浮かべている方が多かったです。中には、歴史のことに詳しい人もおり、楽しそうな雰囲気でした。また、その直後に再度行われたクイズ、
「御堂筋線には「西中島南方」と呼ばれる駅があります。その「中島」とはどこでしょう?」
地図を配られ、みなさん相談をしながら赤線で丸をしていました。これもまた難しかったようで、あちこちで悩んでいる様子が見てとれました。実際に私も地図を見てみましたが、確かに中島はどこまでかは判断が難しかったです。

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地図を眺めながらグループごとに線で丸をしたりと悩んでいる様子がうかがえました。

 

近代の話になると、中島大水道を幕府ではなく農民が自分たちでお金を出して土木工事をしたという話から実際に中島大水道を知っている人がいるか参加者に問いました。そうすると数名の方が「碑が建っているから知ってる!」と言った声も聞こえました。中島大水道は農業用排水路を作ることで、江戸時代にお金になる綿を作っていたそうです。当時は農業不振だったようです。

また、新淀川の改修が1909年に行われた理由については
1.水害のため
2.大阪港のため
3.工業地帯をつくるため

3つの選択肢には大多数の人が「3.工業地帯をつくるため」に手を上げていました。ですが、実は「1.水害のため」と「2.大阪港のため」の二つが正解だと林さんが言うと、「ええ!!二つも?!」と会議室の中で笑い声が漏れました。

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圧倒的に3.工業地帯をつくるためが多かったです。

 

 

そして、最後の公害と水害についての話になると、参加者のみなさんは先ほどの盛り上がりから一転してとても静かな様子で話を聞き入っていました。
西淀川は川や水の堆積物で出来あがった弱い土地があり、また戦前からの工業化で地下水を利用したためにとても地盤が低いです。西淀川は歩いていると電柱に海抜何メートルか書いてあります。よく見ると実はほとんどがマイナスだったりするので、もし街中を歩く時はよく眺めてみてください。
台風での水害や大気汚染公害については、西淀川に住んでいても知らなかった人も多く、「西淀川についてまた一つ知れたなぁ」という反応がありました。
後半の部は参加者の数が少なかったのですが、みなさんは前半の部の参加者のみなさんのように楽しそうにクイズの答えを考えたり真剣な様子で話を聞いてくれました。

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後半の参加者から出た村の名前を書き出していきます。

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西淀川区は工場が多くあったからこそ、戦争でも大きな被害にあっています。

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スクリーンに写されているのは水害で水に浸かっている様子です。

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西淀川区や大阪の大気汚染が酷かったころの写真は、まるで今の中国のようです。

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阪神淡路大震災では西淀川も大きな影響を受けました。

参加者のみなさんが少しでも西淀川について学んでもらえて、とても嬉しかったです。
また、私も西淀川区にあるあおぞら財団のスタッフとして、西淀川のことをまた一つと学べた研修になりました。こうしてもっと西淀川についても知っていこうと思っています。

(松ヶ平)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 10:06 AM

大阪市北ブロック新任教員研修を実施しました(8/17)

8月17日(水)に咲くやこの花中学校・高等学校で2015年度に採用された教員の方、76名に研修を行ってきました。今回は福島区・此花区・西淀川区の新任教員研修の方が対象で、西淀川公害の説明と語り部さんのお話に加え、ワークショップを実施しました。

さすがに70人を超える参加者だと研修室はいっぱいいっぱいでした。
オリエンテーションの後、あおぞら財団の栗本の進行のもとでアイスブレーキングを行いました。参加者の方には最初に配布されていたA4用紙にマーカーで、
・名前
・夏といえば
・1学期を振り返ってちょっと困っていること
・人生で一番印象に残っている学び
を一言、記入してもらい、近くの人と自己紹介をしてもらいました。初めて会う人や、顔見知りの人もいて、みなさんとても積極的にいろいろな話をしている様子がうかがえました。

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参加者の前でアイスブレーキングの説明。


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穏やかな様子でみなさん自己紹介を行っています。

アイスブレーキングのあとに、「帰国した子どもの教育センター校」である西九条小学校の渡邉勇さんの講演が行われました。渡邉さんからは日本語教室の紹介と学習支援についての話がされました。昨年度、大阪市の小中学校に編入学した児童生徒のうち、221人が日本語指導が必要だった現状から、実際に日本語教室ではどのような授業が行われているのか。また、どのような教材を利用するといいのかなどの話が中心となりました。
実際に帰国や来日した児童生徒を受け持っている先生もおられ、熱心に話を聞いていました。いろいろな教材も教室後方に展示され、休憩時間などに目を通している方も多く見かけました。

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「帰国した子どもの教育センター校」の渡邉勇さん。


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渡邉さんの講演を真剣に聞いています。

続いて、栗本から「環境と人権」というテーマで研修が行われました。西淀川大気汚染公害と西淀川という地域についての説明を簡単に行った後、ビデオ「西淀川公害裁判を闘う」を見てもらいました。

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あおぞら財団の栗本による、公害地域の説明やビデオの補足。

その後、「西淀川公害患者と家族の会」の前田春彦さんと事務局長の上田敏幸さんから、当時の被害の話やご自身の体験についてお話をしてもらいました。前田さんは幼少期から続くぜん息の話や、当時の思いやしんどさを話してくれました。仕事がしたくても出来ない辛さや、仕事中に中指の半分を失い障害者になったことなど話をしていると、会場にいる参加者は真剣な様子で前田さんの話に耳を傾けていました。また、ぜん息や肺気腫の友人がいても公害患者として認められていない事実が辛いと胸の内を語ってくれました。上田さんからは、あおぞら財団の設立の話や、現在の患者さんの話などをしてくれました。また、その上で未認定患者に対しても救済の仕組みが欲しい、国や自治体にどうにかして働きかけたいと思っているとお話されました。

質疑応答では、御幣島に住んでいる方から「まだ西淀川ではPM2.5について環境規準が守られていないという話だった。どのように公害問題を解決すればいいのか」という質問が出ました。
この質問に対し上田さんは、「とても回答をするのが難しい質問。私たちは人の暮らしと環境をスローガンにしてきた。世の中にうねりを作っていくには、患者が中心であるのではなく、多くの人たちが『何が出来るだろうか』と考えることが近道なのではないかと思う。今日の出会いをきっかけに、何が出来るか考えていくことが大切なのではないだろうか。世間が公害について関心を持ってくれることが大切ではないだろうか」と回答されました。

最後に前田さんが、今でもぜん息で苦しんでいる患者さんがいて、小さい子でもぜん息の子がいる事実を話してくれました。その上で、未認定患者への補償制度がない今、せめて医療費だけは無料にするなどの医療制度を作って欲しいと話してくれました。

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自身の体験について話をしてくれた、前田春彦さん(写真左)


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現在の患者さんの話について話をしてくれた上田敏幸さん(写真右)

その後、6人ぐらいのグループを作ってワークショップを行いました。
模造紙の真ん中に、
・公害病にかかったら
・もし大気汚染を放置したら
という、どちらかのテーマから連想図を書き出せるだけ書き出し、その影響を想像して分析していくというグループワークです。参加者のみなさんは模造紙いっぱいに次々と連想したことを書き出していきました。話し合いながら書き出すグループや、もくもくと書き出すグループなどもありました。ですが、どのグループもいろいろな想像や、繋がりを発見していく姿がうかがえます。
「公害病にかかったら」というテーマで考えたグループでは、「学校に通いにくい」→「友達ができない」→「相談ができない」という風に、子どもの状況を想像しているところもありました。また、「引っ越ししたくなる」→「それが解決?ふるさとを捨てる?」→「納得できない」という風に、患者の気持ちに共感する連想図もありました。
「もし大気汚染を放置したら」というテーマでは「元に戻すのにコストがかかる」「医療費が増える」といった経済面に注目した意見や、「人口が減る」→「まちが廃れる」というように、自然環境への被害だけでなく社会へも影響が出ることへの想像力を働かせた意見も出ていました。
2グループから全体に発表してもらいましたが、その中には西淀川で教員をしている方もいました!

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もくもくとたくさんの連想図を書き出しているグループです。


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こちらのグループは、班のメンバーでいろいろと話をしながら書き足していました。


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実際に書いた連想図を示しながら、意見の共有。

最後に、研修全体のまとめとして、日本語がわからない子どもや深刻な病気になった子どもなどを想定し、「困難に直面する子どもに関わる心構え」を各自がA4用紙に書くというふりかえりの時間をとり、今回の新任教員研修が終わりました。
いろんな子どもが増えている中、新しく先生になった参加者のみなさんはとても意欲的に参加をしていました。学校で授業をすることだけでも大変だと思いますが、最後に書いた困難に直面する子どもに関わる心構えを思い出しながら、頑張ってくれたら嬉しいなと思いました。
また、私も公害だけではなく、多くの問題や困難と向き合っている人たちとどう関わっていくか、その時の心構えをしっかり考えていきたいと思いました。

(松ヶ平)

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