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2/20 東京学芸大学の研修を受け入れました(1日目)

2014年2月20~21日、東京学芸大学・原子栄一郎ゼミ(環境教育)の研修を受け入れました。

初日の20日は、西淀川公害訴訟の被告企業の1つであった神戸製鋼所の方からのお話を聞き、工場の見学を行いました。

午前は、神戸製鋼所で長らく公害訴訟に関わられた山岸公夫さんからお話を伺いました。

山岸さんは、1969年に神戸製鋼所に入社され、事務職を経た後、長らく法務・法規関係の仕事に携われました。1983年には公害訴訟の会社側責任者となり、87年には法規室長に就任されました。その後、監査の業務に移られ、神戸製鋼所退職後、現在は石光商事の監査役を務めておられます。なお、山岸さんは昨年よりあおぞら財団の監事も務めてくださっています。

お話は、ゼミの学生さんたちが事前に用意した質問に答える形で進められました。

訴訟になった当時の会社側の加害に対する認識として、山岸さんは、大気汚染があるということ、その被害者がいるということはわかっていた。しかし、裁判でも主張したように、工場から排出される煙と健康被害との因果関係が証明されない限り、会社側の責任を問うことはできないという認識だったとおっしゃられました。

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この点は、西淀川のような大気汚染訴訟の難しさに関わります。

原因企業と原因物質が比較的明確な「四大公害病」とは違い、大気汚染は広範囲からの煙によるもので、原因企業も特定されにくいという特徴を持っていました。各企業が独自に操業する中で排出される煙に対して、どのように責任を追及するかが、訴訟の大きなポイントとなりました。

また、山岸さんは、会社側には、正当な行為、つまり様々な生産活動の延長として結果的に煙が排出されているという意識もあったとおっしゃられました。

1950年代後半~70年代前半の日本の高度経済成長は、鉄鋼業部門に代表される重化学工業の著しい発展によってもたらされ、それによって国民の生活水準は急速に向上しました。

神戸製鋼所をはじめ、西淀川公害訴訟の被告企業も戦後の日本経済のけん引役となっていました。

山岸さんのお話は、日本の高度経済成長がもたらした「光」と「影」の部分を、会社側の立場から指摘してくださったものだと思います。

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この点と関わって大事だと思ったのは、山岸さんが「時間軸」の中で問題を考えることの大切さを強調されたことです。

公害防止に関する法整備や社会全体の意識が高まっている現代の感覚や価値観で、過去の行為を間違っていると糾弾するのは違和感を覚える。そのような法制度も社会認識も乏しかったという時代背景をふまえて、公害の問題を考えなければならないと山岸さんはおっしゃられました。

公害とそれに関わる訴訟は、被害者個人や家族、患者団体、原告団、弁護団、原因企業、国・行政など、様々な主体が関わる複雑な問題であり、また長期間にわたるまさしく「歴史」の問題です。

こうした複雑な過去の問題について考え、評価するには、それぞれの立場を理解し、また当時の社会状況に想像力を働かせ、その時代に生きた人たちの立場で問題考え、評価する必要があります。

環境の大切さや公害の防止について学んできた学生さんにとって、山岸さんの話は「会社側の論理」によるもので、自分たちの考え方とは異なるものだったのではないかと思います。

しかし、この問題を様々な立場から、そして長い「時間軸」の中で考える必要があるということを学ぶことで、より深い次元で環境・公害問題について考えるきっかけとなったのではないでしょうか。

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また、山岸さんは、様々な課題や困難を乗り越え、組織を維持し、長期間にわたる裁判で和解解決を勝ち取った西淀川の患者会、原告団のみなさんに敬意を表されていました。企業側との誠実で粘り強い信頼関係の構築、話し合いの継続の先に、和解解決があるのだと改めて感じました。

午後からは、灘浜サイエンススクエアに移動し、神戸製鋼所の企業活動と、2002年から運転が開始された神鋼神戸発電所についての説明を受けました。

灘浜サイエンススクエアは、地域との交流を目的とし、科学技術の面白さを学べる体験型展示や映像展示がある施設です。

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神鋼神戸発電所は、IPP(独立系発電事業者)として、全国のIPP発電の約2割にあたる140万kWを発電しています。これは、神戸市の夏の電力需要がピークの時期の約7割をカバーするものだそうです。

お話の後、発電所内を見学しました。

ボイラ・タービン建屋の中では、発電のしくみや、防音壁の設置など周辺への環境対策について説明を受けました。建屋屋上からは、神戸の街と近接した「都市型発電所」を実感することができました。

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発電所見学後は、再び神戸製鋼所の方から環境経営に関する説明を受け、その後、質疑応答に移りました。

学生さんからは、中国にも進出している神戸製鋼所が、現地でどのような企業活動を行い、環境問題で貢献しているのか。公害訴訟で被告企業となった事実を今どのように考え、会社内外でどのように教育・広報しているのかといった質問が出されました。

神戸出身の学生さんからは、「神鋼は神戸に根付いた企業で、市民にとっての誇りであると思っているが、広報資料や今日の話でも『公害』の文字が一切出てこないのはとても残念だ」という意見も出されました。

神戸製鋼所の方からは、自社を含め、日本の企業には環境に配慮した高い技術力があり、それらを中国をはじめ各国に伝えることで貢献していきたい。現在も、企業内教育として、環境に関する研修やウェブテストを実施しており、それらを継続的に受けることで社員にも「環境を守らねば」という意識が生まれているとお答えいただきました。

おそらく、社員の立場として答えにくい質問が多かったと思いますが、とても誠実に答えてくださいました。

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神戸製鋼所は、西淀川公害訴訟の被告企業の中では唯一あおぞら財団の会員になってくださっています。「過去の反省」の上に立ち、公害の経験と高い技術力をアジア・世界に伝えていっていただければと思います。

山岸さん、神戸製鋼所のみなさん、当日はありがとうございました!

(藤井)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2014年2月24日1:33 PM

大和田の大阪マスジドどんなところ?聞いて食べてしゃべって(あおぞらイコバ大和田でみせ)開催しました。

2月2日日曜日

あおぞらイコバ 大和田でみせ

大和田の大阪マスジドどんなところ?聞いて食べてしゃべって

を開催しました。

1227あおぞらイコバ大和田

会場は大和田4丁目にあるシタラハラールレストラン

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店内ぎゅうぎゅうの参加者が集まってくださいました。

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店内はお香が焚かれ異国情緒漂うムード。

お花の香りのするお香です。

まずはハラールレストランのランチを頂きながらしばし歓談。

マトンダルカリー(羊と豆のカレー)、タンドリーチキン、サモサ、パコラ(野菜のてんぷら)、ビニヤニ(チャーハン)、ナン、パパド(せんべい)、サモサ、サラダ・・・

たくさんの種類とボリューム!

美味しく堪能させて頂きました。

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デザートも!

カスタード、というとてもやわらかいプリンのようなものにフルーツが入ってるもの。

香りもよく子供たちにも大人気でした。

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そして、

ユヌスさんとナリームさんを交え、ムスリムの生活について質疑応答。

龍谷大学生の松本さんが司会進行を勤め、さまざまな質問に答えて頂きました。

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そしていよいよモスク、大阪マスジドの見学へ。

ウドゥーの水場で両手、口、鼻の穴、顔、髪の毛、両腕、足を順に洗う様子を実際に見せて頂く。

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そして2階の礼拝の部屋へ。

ヌマーンさんからお祈りの時間や方角などのお話を伺いながら質疑応答。

最近はiPhoneのアプリがあるのでどこにいてもメッカの方向が分かるとのこと。

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現在の時間と、5回のお祈りの時間、

もうひとつは金曜日の大きいお祈りの時間を示す時計。

きっちりこの時間!というわけではなく、この時間帯の間に5回にお祈りしなさいね、という目安とのこと。

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4階では小学生のパキスタン人の男の子がアラビア語を勉強中。

こうやって日曜日には周辺からこどもたちが学びに来るのだそう。

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その後、

今年オープンしたばかりのプレミアムハラールミートデポへ。

ハラールミートを扱うお肉屋さんです。

満員の店内!

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ここでも、どのようにハラールミートが捌かれるのか、

なぜハラールミートの肉屋さんを開業されたのか、など店主さんにお話を伺いました。

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帰途、SITARAの方々にマンゴージュースのプレゼントも頂きました!

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みなさまに興味を持っていただけて、大和田、西淀川、マスジドなどに興味を持って頂ける一端になれば嬉しいです。

今回のイベントは冊子にまとめてみなさまにご報告いたします。

ご参加くださったみなさま、シタラハラールレストラン、大阪マスジド関連のみなさま、
進行を補助していただいた高田研先生、清水万由子先生、大滝あやさん 本当にありがとうございました。

(水田)

2/6 永野千代子さんによる語りべの授業

2月6日、大阪市立出来島小学校の5年生を対象に西淀川の公害患者さんの語りべ授業が行われました。

お話して下さったのは永野千代子さんです。

まず、最初にあおぞら財団の職員から公害について簡単な説明があり、その後公害患者、小宮路清盛さんの発作時のVTRを見ました。

児童たちは皆、真剣に画面を見つめていました。

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そして永野さんのお話が始まりました。

・西淀川で二酸化ちっ素の環境基準値が近年までオーバーしていたこと。

・PM2.5は国境を越えての汚染だけだはなく、車からも排出されるので国内でも対策を考えなくてはいけないこと。

・公害訴訟についてのお話。

・同じく公害で苦しんでいた息子さんのお話。

など、たくさんのことを聞かせてもらいました。

永野さんの息子さんは出来島小学校の児童でした。

永野さん自身も特別な思いでお話をして下さったと思います。

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特に私が印象に残った話は、公害がひどかった時の空の色についてです。

その当時、西淀川の子どもたちは空の絵を描く時、絵の具で灰色を塗ったそうです。

今ではそんなことは考えられないですし、想像もつきません。

西淀川の人たちの取り組みとして、廃油を再利用してハンドソープにしたり、車の燃料にしたりしていることを話すと、のぼりやポスターを見た事があるという児童が大勢いました。

そういう活動が地域に浸透しているんだと思いました。

児童さんからの質問の時間では「車と工場では汚れた空気をより出しているのはどっちか」というものや「ぜん息、慢性気管支炎の他にどのような病気になるのか」など鋭い質問もありました。

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先日、天野憲一郎さんの授業を受けていたからでしょうか?終始、子どもたちは話を真剣に聞いていて、質問した際もすぐに答えていました。

これを機に公害について興味をもってもらい、きれいな西淀川をつくっていってくれればと思います。

(ボランティア 山澤)

出来島小学校で西淀川公害の授業

2月5日、大阪市立出来島小学校5年生を対象に、天野憲一郎さんによる西淀川公害の授業がありました。天野さんは、元は小学校の教員で、西淀川区の小学校でも長年にわたり教鞭をとっていました。現在は、あおぞら財団で環境教育の活動に関するボランティアや、公害資料の整理のお仕事でもご協力頂いています。

子ども向けの西淀川公害学習用のDVD『手渡したいのは青い空~未来からのメッセージ 』を用いて授業を行いました。

教科書には、四大公害は掲載されていますが、西淀川公害はでていません。西淀川公害と教科書に掲載された公害との関連が理解しやすいよう教科書を拡大し黒板に貼ったり、DVDを放映する前に、西淀川で撮影された事等にふれ子どもの興味をひくなど、様々な工夫をしながら授業をすすめていました。

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西淀川に大気汚染公害の被害が拡がっていた頃の写真や、スモッグのかかった現在の中国の写真を用いて、今なお続く大気汚染公害を皆で考えなくてはいけないことを子どもたちに示していました。

(小平記)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,西淀川公害授業 — aozorafoundation 公開日 4:12 PM

1/23 中国環境NPO研修3日目@大阪府立環境科学センター

中国環境NPO研修3日目の1月23日は、森ノ宮にある大阪府立環境農林水産総合研究所環境科学センターを見学しました。

まず、大阪府の大気測定の取り組みとその測定データについて説明を受けました。

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大阪府では、府内105ヶ所に測定局を設け、NO2やSO2、PM2.5をはじめ7種類の大気汚染物質と、風量・風向・日射量などを常時測定しています。

昨今話題にあがるPM2.5の測定は2年ほど前から本格的始まりましたが、2012年度、環境基準を達成したのは対象33局中2局だったそうです。また、光化学スモッグとPM2.5については、基準値を超えた場合府民への注意喚起を行っています。

その後、施設屋上にあがり環境省の国設大気測定局を見学しました。ガラス管を通して常時測定(粒子が小さいPM2.5は別の方法で測定)される大気中の各汚染物質量は、サーバーに収集され、1時間ごとのデータが公開されています。

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続いて、アスベストの測定・分析について説明を受けました。

研究所では、大気中のアスベストと建材中のアスベストの2つを分析しています。中国の方々からは、現在もアスベストは建材として使われているのかという質問が出ました。日本では、2006年から石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有する全ての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則禁止されています。

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最後に、水質中の重金属の質量分析の設備を見学しました。

ICP質量分析装置と呼ばれるもので、採取した水に電流を流しプラズマを発生させ、そこに含まれる各重金属の質量を測定します。測定結果は2時間ほどでわかるそうです。中国で水質汚濁の問題に関わっておられる方は、中国で同様の検査をしたら1週間以上かかると驚いておられました。

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この見学を通じて、中国の皆さんが最も関心を持たれたのが、公害・環境問題に対する行政の機能・取り組みに関することでした。

民間NPOの人間が行政機関を訪れ職員と容易に対話ができること、法制度に基づいて環境測定データが刊行物やウェブ上で公開されていることに大変驚かれていました。中国では、裁判資料として測定データなどが必要な場合、該当機関に有償で証明書を発行してもらう必要があり、そもそもそうした情報・データにアクセスすること自体が難しいそうです。

情報公開を積極的に行い、企業への抜き打ち検査や改善指導を行っている行政職員の皆さんに大変感心されていました。

日本の中にいると、行政が市民サービスを行ったり、情報公開を行うことは国民の当然の権利であり、日頃はあまりそのことについて深く考えることがないかもしれません。しかし、中国の方々が自国で直面されている現状を聞くにつれ、情報公開が国民・市民の生活を良くする根本にあることを改めて考えさせられました。

国民・市民の声がすくい上げ、皆が幸せに暮らしてゆける社会を作っていくことは、歴史や文化、宗教、政治体制の違いに関係なく万国共通の課題だと思います。

日本においても、こうした国民・市民の権利がただ漫然と存在しているのではありません。国や自治体に対して国民・市民の声を絶えず伝え、企業とも協力しながら問題を解決していくことが求められています。

中国をはじめ諸外国の人たちに日本の公害の経験を伝えることは、日本自らの経験を省み、それを継承・発展させることにつながっていると、今回の研修を通じて考えさせられました。

(藤井)

本事業は環境省委託平成25年度大気汚染経験等情報発信事業の一環です。

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,国際交流,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2014年1月23日4:18 PM
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