2006年8月5日、6日
イタイイタイ病の原因である
三井金属鉱業株式会社(現:神岡鉱業)との公害防止協定に基づいた工場の立ち入り調査が行われました。
なんと、今回で35回目です。
公害防止協定は、公害裁判の勝利判決で勝ち取ったものです。
裁判後から、毎年繰り返し立入調査がおこなわれ、
神通川の汚染を減らすために大きな役割を果たしてこられました。
3月8日のエコミューズオープンを記念して行われたシンポジウムに
イタイイタイ病から高木さんと近藤弁護士にお話ししていただいたこともあり、
なんとか、現場を見てみたいという思いから今回の参加となりました。
5日
富山駅から八尾行きバスに乗り、会場となる清流会館にむかいました。
神岡カドミウムに汚染された神通川が農業用水となる地域の農地が汚染されてしまい
生産する米がカドミウムに汚染されるという悲劇が起きました。
いま現在も汚染された農地の土の入れ替えが行われています。
土壌が入れ替えられた土は赤いです。
汚染土の入れ替えは平成23年まで続きます。
<清流会館>
公害反対運動の中心となっているのが「清流会館」です。
展示施設もあり、イタイイタイ病と世界の土壌汚染について学べます。
エコミューズよりも何倍も立派な展示施設です。
<学習会>
イタイイタイ病の歴史と立ち入り調査で見るべき場所を学習します。
工場で何を作っているのか?という基礎的なことがわかっていない私は学習についていくので必死です。
「工場見学でなくて立入調査なのだから、なんでも質問するように」
との言葉に緊張しました。
6日
<立入調査>
7コースに分かれて立入調査が行われます。
私は、鹿間工場・和佐保堆積場のコースでした。
全員、ヘルメットをかぶります。
鹿間工場は鉛リサイクル工場で、自動車のバッテリーを粉砕して鉛を取り出します。
その他にも金・銀・白銀・プラスティックなども取り出します。
もともとは、神岡鉱山の鉱石から原料を取り出していたのですが、
現在はリサイクル業を行っているということです。
水溶の汚染物質を取り除くのがシックナーです。
汚染水に凝固剤を混ぜ、底に沈殿させて、上澄みだけを流します。
大気の汚染物質を取り除くのが集塵装置や排煙脱硫装置となります。
冷却して、汚染物質を取り除いています。
これらの汚染物質が埋められているのが和佐保堆積場です。
汚染物質の場所は植物も生えず、不気味な色をしています。
東京ドーム20個分ということです。
神通川が汚染されたのはなぜかというのは、汚染除去施設がなかったからというわけではなくて、
あらゆる場所の漏れがひどく、工場内の土壌が汚染されていたことから水が汚染されたのも原因の一つだと教えられ、
工場の立入調査によってその漏れが次第に改善され、カドミウムの排出量が自然値と変わらないレベルになってきたそうです。
汚染対策を工場任せにするのでなく、住民がおかしいと思うことを指摘して、無公害企業に育てていくというスタイルがここで確立されています。
世界に例がない、すばらしい事例です。
現在は、災害などの非常時にどれだけ対応が取れるかということが重視されています。
余談ですが
工場に入って一番最初に驚いたのは、においです。明らかに硫黄酸化物のにおい。
大気汚染の原因はまず第1は硫黄酸化物SOxです。(現在はチッソ酸化物NOx)
説明をしてくださった工場長に二酸化窒素の濃度を尋ねましたが
「においますか?」といわれてしまいました。
排煙が漏れていたら周囲の木々が枯れてしまうとのことでしたが、
木々が枯れるまで高濃度汚染でもなくとも、明らかにもれているからにおいがするのではないか?と疑問に思いました。
<質疑>
流葉会館にて、神岡鉱山と住民の質疑応答が
ありました。
学者や弁護士が企業に質問するのではなく、住民が一つづつ質問をします。
住民の意見を取り入れる柔軟な姿勢が神岡鉱山にはありました。
こういう態度になったのは、ここ2・3年のことだそうです。
長い長い積み重ねで、ここまでたどり着けたのは、双方の努力がないとできないことです。
もっと、この双方の取り組みが広く知られて欲しいと心から思いました。(林美帆)
★西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)のホームページはこちら