日中環境問題サロン2012開催(3/14)
日中環境問題サロン2012「日中協働によるサプライチェーンのグリーン化をめざして」
~中国環境NGOネットワーク“Green Choice Alliance(GCA)活動報告~
日 時=2012年3月14日(水)14:00~17:00
会 場=グリーンルーム(あおぞらビル3F)
主 催=公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)
協 力=東アジア環境情報発伝所
参加者=23人
科学技術のおかげで、昔より、生活水準が高くなりました。しかし、その成果により、日常生活に広がり蓄積する環境リスクの問題も深刻になってきました。これは人間の知恵に対して、皮肉なことであるかもしれません。人為的な活動によって生じた環境の汚染や環境負荷が、環境の経路を通じて、ある条件のもとで人間の健康や生態系に影響を及ぼすおそれがあります。近年、中国の経済は世界的にも目覚ましく発展しました。しかし、無責任な製品開発や建設工事が増え、大企業の生産に伴う環境汚染に対して技術や資金、情報や動機などが足りないため、生じた環境被害も多くなりました。
今回の日中環境問題サロンには、中国の環境NGOネットワーク「グリーン・チョイス・アライアンス(GCA)」メンバーが、中国における汚染の実態やNPOの取り組みなどを報告しました。
《プログラム》
14:00 挨拶・趣旨説明
14:10 報告「中国におけるGCAの活動と日本企業への期待」
(中国の公衆環境研究センター:IPE代表 馬軍氏)※インターネット中継
馬軍氏報告資料:环境挑战与绿色选择日文版(軽)
14:50 質疑応答
15:25 休憩
15:30 報告「中国で広がるGCAネットワーク」
(環友科学技術研究中心代表/GCA・NGOネットワーク担当 李力氏)
李力氏報告資料:绿色选择与社会监督20120314(軽))
16:20 質疑応答
17:00 閉会
《質疑応答》
◎馬軍氏の報告に関して
会場から:砂漠化の原因とNPOの取り組みについて教えてください。
馬軍氏:日本・欧米がすぐれた環境整備の技術を持つことを知っております。そのような技術をぜひ中国に引き入れ、中国の環境問題の解決に役立ってほしいと思います。公衆参加によって、選択できるようにし、企業がいい技術を使って、汚染を改善することをのぞみます。次に砂漠化問題について、それは中国の環境問題の中で一番厳しい課題になっております。おもな原因は、もともと乾燥する地域に対して、不適切な開発が行われていたことで、砂漠化の問題が起こっていると思います。砂漠周辺の草原で、石炭や石油などを使って開発が行なわれ、水がしようされ、水不足を起こして、更に砂漠化がだんだん深刻になっています。しかも、その砂漠化の地域で、多く都市を作って、水も汚染されて、砂漠問題に新たな課題がおこっています。一番最初のやり方として、植林でその砂漠化問題を解決しようとしました。しかし、今、植林した木や草原などが砂漠にふさわしくないため、もっとその地域にふさわしい植物を探しています。経済活動を減らし、自然の力で治していくことが大切です。更に大事なことは、きれいな使える水を提供することです。その問題を解決するため、水の使用効率を高めるなど、ぜひ日本から技術を応援していただきたいです。
会場から:空気汚染・水汚染地図のデータはどこから手に入れましたか。中国政府は情報公開することを認めていますか。
馬軍氏:データは中国政府が中国国内の企業に対して、定期に行った検査によって出たデータです。そのデータに基づいて、地図を作りました。こうした観測には大型な観測用の機器を使って、また一部の地域においては、オンラインで検索できるようなシステムを置いております。私たちが主に取り扱っている情報は、中国政府の環境部門が出しているデータです。そのほかに、水利部門・国土資源部門からのデータを整理した一部です。中国が環境問題に対する態度が一番進歩したのは環境に関する情報が開示されるようになったという点です。2008年、中国では環境情報を公開するための法律が制定されました。そして、企業は環境の整備状況を報告しなければならないのです。私が四年間ずっとデータの開示状況を見ていますが、ずいぶん大きく開示されるようになっています。2006年に私たちがデータを収集し始めたのですが、わずかに2,500件のデータしか開示されなかったです。現在(2012年)、95,000と大幅に多くなりました。二つ目の質問について、政府が開示している情報を使っておりますので、ほかの機関及び他の人々を含め、それを使用したことを反対するということはありません。
馬軍氏:私たちの団体はシャープやパナソニックなど日本の大企業と数年にわたり交流をもっています。うちキャノンは消極的ですが他の企業は積極的に環境改善に取り組んでいます。ただ、日本企業の問題としては、自身の工場は環境改善をしますが、サプライチェーン、下請けの工場については手をつけたがらないという傾向があります。しかし、ソニーはサプライヤーに対して環境管理や説明を積極的におこなってくれました。そこで私たちNGOは日本の大企業とともにこの問題に取り組んで、サプライヤーに対する管理もおこなってほしいと考えています。本日はありがとうございました。
◎李力氏の報告に関して
会場から:中国の政府や地域では、企業の環境経営について、法律や認証制度はがありますか。
李力氏:中国には環境法や政策、法規など(ISOみたいな)はあります。ただ問題はこのような法規を適用し、守るのは大型、中規模企業でありまして、今、問題になっているのは二次とか三次の小さい工場など個人・小企業がその法律や法規を無視することです。また、大手の企業がある地方に進出する場合には、とても僻地を選択し、環境問題よりGDP、税収、経済を優先するということもあります。ひとつ問題を提起したいのは、大手企業が発注する時に、利益をもっと求めるため、コストを更に下げるのは普通です。そのため、発注する数が多いですが、中国の工場がもらえる利益の幅が本当に狭くなっております。その仕事を受けた小さな企業が環境対策や環境対応を行うための利益が入っていないということも、私たちの今回の活動でわかったことです。ですので、私たちGCAの活動としては、ブランド企業・大手企業の全面的な改善を求めます。さらに、ひとつの悪い例を挙げますと、中型企業が地方政府に誘致され、登録して、三年間の免税という優遇政策を受けます。しかし三年後、環境問題を発生させたまま、他のところへ移動することがあります。他には、先ほど馬軍先生も言いましたが、中国には環境保護についての法律や法規がたくさんありますが、それを使って、環境を守る時に、地方での執行力がとても弱いのです。それは経済が重視されるためで、そこで欠かせないのはわれわれのNGOの監督だと思います。
会場から:iphoneやパソコンなどの企業の汚染問題が見えやすいが、素材メーカーからの汚染にはどのように対応しているか。(例えば、日本の水俣病)
李力氏:今、具体的なモデルはないのですが、まず、はっきりしているのは、素材メーカーは直接に消費者に届くものではなくて、チェーンと繋がる会社です。現在、一次調査とか、一番最初のベースになる調査を行っておりまして、その調査ができ、また今回とは違うモデルで活動を進めていくのじゃないかと思っております。一つ目の事例をあげますと、重慶に皮革工場がありまして、皮と皮革を生産するところです。その素材が六価クロムにより、汚染問題がひどくなっております。しかし、その面は消費者にはわからないのです。なぜなら、その工場が直接、服を作るメーカーと貿易しているからです。そのため、私たちがまず、工場の管理者と相談して、交渉を行うということ、それから、メディアにその情報について発信し続けます。そして、政府に同時に環境アセスメント評価を行なうように取り組みました。現在、その工場がちょっと緩やかですが、動き始め、新しい設備を購入したり、残りの処理設備も投入したりとかして、今、生産にとっては不利ですが、その企業が昔から残った残渣を処理し続けています。
会場から:日本では地方都市(横浜、川崎、大阪など)が国よりも先行して対策を行なった。法人税は都道府県に入るが、市町村には入らないので、対策する上では関係なくできたのかも。
李力氏:地方自治制度や財政制度が大きい課題です。中国と日本の税金制度が全く違いますし、日本と中国の都道府県制度も違います。そのため、公害問題に対応するやり方も違うかもしれない。地方では、北京の評価を気にする風潮がある。地方の環境を良くしたら評価されるという仕組もあるが。
会場から:環境に投資したら税を安くするなどしたらいいのでは。また、改善を行なった工場には、そのことがわかる旗やステッカーをあげるようにしてはどうか。
李力氏:アドバイスありがとうございます。中国でも淮河衛士では、そのような取り組みを行なっています。
中国の環境NGOは20年ぐらい前からでき、ほとんどの団体は10年ぐらい前から発足しました。つまり、中国の環境NGOは非常に新しいのです。日本では、公害反対運動の活動を40年も続けていると聞いて驚きました。日本側ともっと交流して、日本の経験をもちかえって、中国に合った、新たな対策をたてていきたいと思います。今年は中日国交正常化40年にあたる大事な年です。いろいろ問題もあるなか、環境に関しては、よい交流をもっていきたいと思います。今日はありがとうございました。
記録者感想:科学進歩のおかげで、国々は昔のような閉鎖的な関係にあるのではなく、グローバルになりました。そのため、世界全体の人々は環境・自然に対して責任と意識が高まるようになりました。アジア諸国の中で、環境問題の整備は日本が一番良いと思います。日本はかつて途上国として、高度経済成長期のとき、環境問題がもちろんありました。特に四大公害は国際社会を震撼させる大事件でした。その時の日本はおそらく今の中国と同様、途上国として経済の発展は何よりも重要であるという考え方を持っていたのかもしれません。日本経済の高度成長期の頃の経済を重視する考え方から、環境を重視する考え方への転換は環境整備が進んでいない中国にとっていい経験と教訓だと考えられます。環境問題が引き起こしたのは、汚染問題だけではなく、「不均衡」な分配を通じた格差の拡大、文化の多様性に対する配慮の欠如など、倫理的、文化的、外交的な側面でさまざまな問題を引き起こしている可能性があります。そのため、環境正義を求めることは重要だと思います。そうすることで、環境問題に取り組むことができ、社会全体が環境にかかわる責任感を形成するために、環境を守る意識を持ちます。そして、自然との共生社会を構築することを期待しています。
記録:劉婷(神戸大学大学院生/人文学研究科)