日中環境問題サロン2016(第四回):「中国の公害・環境問題と環境NGOの取り組み」(2016/12/21)を開催しました。
日時=2016年12月21日(水)18:00~20:30
場所=グランフロント大阪 ナレッジキャピタル アクティブスタジオ
主催=あおぞら財団
協力=一般社団法人ナレッジキャピタル
今回の日中環境サロンでは、中国の各地で環境保護に尽力されている4名の環境NGOメンバーから、中国での公害・環境問題に対するNGO活動についてお話を伺いました。
写真:会場の様子
【講演者・内容】
① 李力氏(北京市朝陽区環友科学技術研究センター 主任)
■環境教育、気候変動問題、企業と連携した問題解決等の活動
李力氏は北京市朝陽区環友科学技術研究センター(環友科技)の主任として勤めており、長年環境保護事業に尽力している人物です。「2014-2015年SOHU公益先峰人物」(中国のポータルサイト「SOHU」が選ぶ各分野の先駆者。李氏は公益部門で受賞された。)の一人として選ばれ、最近、1元(約16円)の年給で、湖北楚源高新科技集団株式会社の副総経理も務められています。わずかな給料にもかかわらず、楚源集団の環境管理面で監督、指導及び審査等の権利を持ち、一票拒否権を持っています。この行動はメディアにも報道されていました。
今回の講義においては、李力氏は環境活動友科学技術研究センターのプロジェクトを紹介しながら、長年の環境保護経験について報告いただきました。
② 趙亮氏(好空気保衛侠)
■大気汚染改善を目的に2014年に設立。
趙亮氏は大卒後に就職せず、多くの若いメンバーを集め、「天津緑领」(2010年に創立された民間環境保護公益機関)を創設し、今、理事の一人として勤められています。SNSなどを駆使して企業活動を監視し行政の監督を促がしている。
今回のサロンでは、主に、2014年に発足した「好空気保衛侠」というプロジェクトについて紹介され、プロジェクトの運営、実績及び直面している課題等について説明していただきました。
③ 徐華氏(昆山市鹿城環保ボランティアサービス社)
■上海市北部の昆山市で排油再利用やごみ分別などの啓蒙活動を行っています。
徐華氏は「電子城」(電化製品の製造で有名な都市)である昆山市から来られ、主に廃油の再利用やゴミ分類などの啓蒙活動を行っています。朝食店から廃油を回収し、それを原料とし石鹸を作られています。そして、このような活動を通して、地域の民衆の環境保護意識を高めています。活動について紹介した後、実際に廃油で作った石鹸も見せてくださいました。ピンクの包装はリサイクルしたウェディングドレスで作られました
④ 宋克明氏(長垣県緑色未来環境保護協会)
■野雁の保護、生息地の保全。河南省の東部にある長垣県で2002年から活動
写真:鳥(特にノガン-中国国家一級重要保護鳥類)の保護活動について紹介する宗氏
宋克明氏は河南省に位置している長垣県から来られ、20年以上も、野生動物、特にノガンの保護に力を尽力している人物です。ノガンは世界最大の飛翔する鳥類の一つであり、東欧諸国に生息するノガンはすでに絶滅しました。現在東アジア系は800羽に満たず、個体数は年々減少し絶滅に瀕しています。長垣県黄河河畔の湿地帯には、日中及び中豪間に結ばれた渡り鳥保護協定の保護対象鳥類が109種、国家重点保護鳥類が36種生息しています。そこはノガンの主な越冬地であり、東アジアのノガンの2分の1(300羽あまり)に相当する数がここで冬を越しています。夜にノガンを狩猟する方が多いため、宋氏らの活動も夜で行うことが多いそうです。
質疑応答・意見交換の時間には様々な質問が出ました。NGOと企業や政府との関係性や取り組み、中国国民の環境意識の変化について質問があがると、宗氏は「政府のトップ層が環境対策を重視し出した結果、民間レベルでも環境意識が高まってきているが、人口大国である中国にとって環境保護の道のりはまだまだ遠い」とおっしゃっていました。
サロン終了後の集合写真
記・張茜樺(大阪大学 国際公共政策研究 M1・未来共生イノベーター博士課程プログラム4期生)
<日中環境問題サロン>
あおぞら財団の国際交流事業の一環として、中国の公害・環境問題に関する研究者、中国で活躍する専門家・環境NGOメンバー等を講師に迎え、中国の公害・環境問題についての報告や参加者との意見交換を行う日中環境問題サロンを2009年から開催しています。本年度(2016年度)は、様々なテーマで4回程度の開催を予定しています。
【第一回】どうなる?中国の大気汚染(6月10日(水)) 終了
【第二回】「中国における環境訴訟の現状と今後の展望」(8月5日(金))終了
【第三回】「重金属汚染とその被害―現地視察報告を中心に」(10月7日(金)) 終了
本事業は平成28年度大気汚染経験等情報発信事業の一環です。