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西淀川公害=資料の紹介(9)公害裁判、提訴決断への道 -大阪弁護士会公害対策委員会の「実態調査報告」—

※機関誌りべらで連載をしている所蔵資料紹介コーナーの転載記事です(りべら167号より転載)。

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1974年、大阪弁護士会公害対策委員会(委員長 真鍋正一)は重点活動の一つとして西淀川問題小委員会を設置し、「人権擁護の立場から」大阪の大気汚染公害問題に取り組んだ。写真の冊子はこのときの調査成果で、1975年6月付け、『大気汚染 大阪西淀川における実態調査報告第一号』と名付けられた。9月には「公害健康被害補償法」(公健法)が実施されようとしていたときでもあった。

だが、大都市なかでもその周辺の工業地域に広がっていた都市型大気汚染公害の重大性は、それに取り組もうとする弁護士の間でも必ずしも十分には認識されていなかった。当時急速に会員数を増やしていた西淀川公害患者と家族の会(患者会。1972年10月結成)は、公害被害が生活の全側面にわたって被害者たちを苦しめていた実情や、補償が全くそれに見合っていないことに気付き、最低四日市公害判決(1972年7月24日)以上の補償を求めて運動を強めていた。こうした中、患者会は、大阪でも裁判でこの状況を打破できないかと若手弁護士たちに問いかけたのである。ちなみに、1969年12月制定の「公害にかかる健康被害の救済に関する特別措置法」(救済法)以来、公害認定患者数は増え続け、1975年5月26日現在では大阪市全体で6,030人、うち西淀川区は3, 607人の多数を数え、さらに増えていた。言うまでもなく、大阪市の順位は日本第一を占め続けていた。

若手弁護士たちは個々の患者と会い、彼らの心の奥底にある悩みを聞いていく中で西淀川における大気汚染公害の被害の多面性、深刻さを知り、それを取り上げることの重要性を理解していった。彼らは裁判に踏み切るための体制を固めるため、自分たちより大きな権威を持つ大阪弁護士会に対して前向きな見解を求めたのである。
「実態調査報告」はその要請によく応えている。

しかし同時に、残された大きな課題、たとえば、古い都市型工業地帯における大企業の法的責任について試論を提起している。これは、大企業から中小零細企業までもが混じりあって、相互に複合化している都市型公害でこそ求められる追及の視点であった。西淀川公害では創造性にあふれた調査と研究が何より求められていたのである。

大気汚染 大阪西淀川における実態調査報告第一号

西淀川公害訴訟弁護団資料No.7250

 

エコミューズ館長:小田康徳

エコミューズ館長日記No.23

今回は4月11日と14日、2日分をまとめてご報告します。

4月に入って作業を進めるうえで、新たな戦力が加わりました。大阪にある某公立大学の大学院生某コウタくんが我々の仕事の仲間に加わりました。(館長日記No.15に彼の名前が載っていることが判明したので、気になる方はそちらをご確認ください笑 byミナコ)というわけで、本格的な作業は少しずつ始まっています。今回取り組み始めたのは、資料本文の校訂作業。校訂作業とは、資料原本と翻刻文を見比べ、翻刻文が原本通り、もしくは原本も含めて疑問な点がないかを一文字ずつ調査し、確定していく作業です。なかなか豊かな国語力と歴史感覚が必要とされる作業である。4月14日は、例のミナコさんと分担して作業を進めてもらった。さっそく、コウタくんが第1章の聞き取り資料の山と格闘することとなった。ここで資料用の紙面の面積を確保するため、あまり重要と思われない箇所を略していたのであるが、短くてさほど重要ではないところについては削除のマークをせずにおったところ、「このような箇所がよく出てくるんですが、これでいいんですか?」と質問してきた。私はいちいち表記するのはめんどうだったが、それを発見してくれる。「うん。そうだね。」とすまして、「こういう中略部分の存在は、全体の趣旨が変わることがないのであれば、いちいち注記しないでもういいのではないか。ただし、そのことを凡例で明記しておく必要があるなぁ」と答えておいた。そして、「そのような事例を別紙にその都度メモしておいて、あとでかっちりした凡例を作ることにしよう」と1つの宿題を課す。

まあ、このような感じで作業が始まった。

やがて昼ご飯になり、午後からはエコミューズの定例会議と資料勉強会へと進み、資料勉強会には龍谷大学の清水先生も参加された。定例会議では、この資料集が出版出来たら、その意義をみんなに知ってもらうためにどんなことをすればいいのか、色々と意見を交換した。清水先生は、この資料集のおもしろいところ“私の推し資料”を報告し合う会を作ったらどうでしょうか、と提案された。原資料を生かす、いい方法だとみんなが拍手した。・・・こんな調子で、今日も終わろうとしている。

2025.4.14小田康徳

まだまだ西淀川の公害のことを知らないのでお仕事していく中で、勉強しながら戦力になれるよう、頑張りたいです。   Byコウタ

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あおぞら財団付属 西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)では、西淀川公害がわかる資料集を作成しようと、ほぼ毎週、小田康徳館長が来館し、調査作業を進めています。そのようすを「エコミューズ館長日記」にてお届けします。

【ご寄附のお願い】「西淀川公害がわかる資料集」のための寄附を募集しています。どうぞみなさまの寄附でこの活動を支えていただきますようお願いいたします。
■寄附の方法はこちら https://www.aozora.or.jp/ecomuse/contibution_doner

※資料集のウェブ版作成には、(独法)環境再生保全機構地球環境基金助成金を活用しています。

#おもろいわ西淀川
#にしよど
#魅力発信サポーター
#エコミューズ
#西淀川公害がわかる資料集

【パンフ&動画完成】西淀川フィールドワークのご案内

公害地域から持続可能な地域へ。
あおぞら財団では、大気汚染公害地域であった西淀川から“学ぶ”フィールドワークを行っています。

このたび、私たちが取り組んでいる西淀川フィールドワークの魅力をもっと多くの方に知っていただくために、
新しく紹介動画とパンフレットを作成しました。

動画では現地の様子をリアルに感じていただきながら、パンフレットではフィールドワークの学びのポイントをわかりやすくご紹介しています。

▼ 大事にしている3つのこと
かつては「公害のまち」と呼ばれていた西淀川が、市民の力で“持続可能なまち”へと変わろうとしています。
その変化の過程を、「実際の場所」で体感しながら学べるのが、西淀川フィールドワークです。

あおぞら財団では、このフィールドワークを通じて、次の3つの学びを大切にしています。
① 現場から学ぶ
② 社会を変える力を知り、市民力を高める
③ 多様性を大事にし、様々な視点から学ぶ

▼ 紹介動画『公害地域から持続可能な地域へ』が完成!
今回あらたに制作した紹介動画では、大野川緑陰道路や国道43号など、実際のフィールドワークの一部をご紹介しています。
かつて大気汚染に苦しんだまちが、住民の力でどう変わってきたのか――その変化を体感できます。

▼ パンフレットも完成
『公害地域から持続可能な地域へ―まちが見えてくる。大気汚染公害地域で学ぶSDGs西淀川教育研修プログラム―」

今回新たに作成したこのパンフレットでは、現地のフィールドワークでどんな学びが得られるのか、
写真やキーワードとともにわかりやすく紹介しています。

内容は…

・フィールドワークプログラムの紹介
- 住民はどうやって環境を取り戻した!?/工場はどこへ行った!?/「公害道路」の今は?/西淀川区は海の中!?/地域再生のキーワード「パートナーシップ」 -
・多様な立場から西淀川公害を聞ける!
・教材の紹介

是非、こちらからダウンロードして読んでみてください。

ダウンロードはこちらから

▼授業やゼミ活動の一環としてご活用ください!

西淀川フィールドワークは、下記のような方々におすすめです。

・公害・環境学習やSDGs教育に関心がある大学・学校・教員の方
- ゼミ活動や授業(環境法、公衆衛生学、都市計画等)の一環として -
・公害・環境、まちづくり、市民運動、人権について現場で学びたい学生や社会人の方

今までの研修・フィールドワークの受入れ実績はこちら


▼ お申し込み・お問い合わせ

「まちの過去」と「これからの社会」をつなげる学びを、西淀川からはじめませんか?
西淀川の空の下で、一緒に考え、語り合える時間をお待ちしています!

📩 お問い合わせ・お申込みはこちら

西淀川フィールドワーク・団体研修

お申込み用紙 :申し込みフォーム pdf形式 excel形式
電子メール : webmaster[at]aozora.or.jp ([at]を@に変えてください)
(Tel) 06-6475-8885 Fax : 06-6478-5885

Filed under: イベント案内,環境学習,視察受入 — aozorafoundation 公開日 2025年4月11日11:10 AM

2025年度淀協の新人研修:まちを歩き、公害患者の声を聞く(4/3)

4月3日(木)、淀川勤労者厚生協会・大阪ファルマプランに入職された新入職員のみなさん35名を対象に、「西淀川の公害・災害の歴史と住み続けられるまちづくり」をテーマとした研修を実施しました。
あおぞら財団から谷内と藤江が講師・案内役を務めました。

■ 西淀川のまちを“歩いて知る”フィールドワーク
研修は阪神「出来島」駅からスタート。

国道43号や出来島小学校、あおぞら苑、千北診療所、神崎川の防潮鉄扉、大和田街道、大阪マスジド、大野川緑陰道路などをめぐりながら、実際に足でまちを歩きました。

参加者からは、
「街が川より低いことに衝撃を受けた」
「実際に歩いて災害や公害のリスクを五感で感じられた」
「あちこちに避難場所の案内があり、まちぐるみで備えていると感じた」
といった感想が寄せられ、地形や防災のリアルを肌で感じる機会となったようです。

■公害を追体験するロールプレイ
研修後半はのざと診療所に移動し、グループワークを実施。

フォトランゲージとロールプレイを組み合わせ、西淀川の公害について体験的に考える時間となりました。

フォトランゲージでは、西淀川で起きた公害を記録した写真を見ながら、それぞれが感じたことを言葉に。
続くロールプレイ「もしあなたのまちで公害が起きたら?」では、企業、患者、行政など異なる立場の人になりきりながら、公害に向き合う難しさや、対話の重要性を体感しました。

■ 公害・災害の歴史と、これからのまちづくりを学ぶ講義
講義では、西淀川の公害や災害の歴史を振り返りつつ、「住み続けられるまちづくり」に向けた地域の取り組みを紹介。

ロールプレイで出た意見にも触れながら、過去から現在、そして未来へとつながる話をお届けしました。

■ 公害患者さんの生の声を聞く
最後には、西淀川公害患者と家族の会・会長の山下明さんから、ご自身の体験をお話しいただきました。

山下さんは、公害病が仕事に与えた影響や、工事現場での発作による心肺停止、過去のステロイド治療による副作用など、ご自身の身体に今も続く影響について語ってくださいました。

自身の経験を語る山下さん

山下さんの話に聞き入る参加者のみなさん

参加者からは、
「公害は過去の話ではない」
「今もなお続く健康への影響を知った」
「同じ大阪で、こんなに深刻な公害があったことを初めて知った」
「医療従事者として、公害や環境問題にも目を向けたい」
といった感想が寄せられ、多くの新入職員が心を動かされた様子でした。

■ 最後に

今回の研修では、西淀川のまちを実際に歩き、公害や災害の歴史に触れ、公害患者さんの生の声を聴くことで、まちの背景を多角的に学んでいただきました。

参加された皆さんは、これから西淀川の医療の現場で働くことになります。

今日の学びを通じて、目の前の患者さん一人ひとりの人生や、その背後にある社会的な課題にも想いを寄せながら、寄り添う医療を実践していただけることを願っています。

(谷内)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入 — aozorafoundation 公開日 2025年4月10日6:59 PM

大阪公立大学「都市基盤計画特論」発表会を開催!(3/25)

3月25日、あおぞら財団にて、大阪公立大学大学院の「都市基盤計画特論」の成果発表会が開催されました。
この講義は、11月から1月にかけて西淀川区を舞台に行われたもので、学生たちは現地調査やヒアリングなどを通じて地域課題を学び、その学びをもとにグループごとの提案をまとめました。

発表会当日は、あおぞら財団の職員に加え、西淀川公害患者と家族の会 事務局の上田さん、西淀川区役所政策共創課の西尾課長、中村さんにもご参加いただき、学生たちの提案に対する率直な意見交換が行われました。

◆ 提案①「水とともに在る暮らしを考える」
1つ目のグループからは、西淀川区が抱える水害リスクをテーマに、「防災」と「水辺の魅力づくり」の両立を目指す提案がなされました。

特に印象的だったのは、防災チャットボットを活用した情報発信や、河川空間を活かした親水エリアの整備、さらに夜間のにぎわい創出を目指すナイトタイムエコノミーの導入といった、アイデアに富んだ内容です。

質疑応答では、矢倉緑地公園への交通アクセスの課題や、水辺空間の利活用にあたってのハードル(治水上の制度上の問題)についての質問があり、学生たちも真剣に応答していました。

発表の様子

◆ 提案②「若者の地域参加に向けた提案」
2つ目のグループは、地域コミュニティの希薄化や産業の衰退、情報共有の不足といった現状に注目。これらの課題に対し、廃校を拠点に若者の地域参加を促す施策を提案しました。

廃校を活用して地域イベントを開催したり、コワーキングスペースとして開放したり、さらにものづくりや食文化、多文化共生を体験できる場にするという、地域資源を生かしたアイデアが紹介されました。

◆ 地域に根ざした学びが、未来へとつながる
どちらの提案も、実現に向けてはハードルが少なくないかもしれません。ですが、学生ならではの視点や柔軟な発想、フィールドワークで得たリアルな課題感が込められた提案は、聞く側にも新しい視点や気づきを与えてくれました。

今回の学びを通じて、学生の皆さんが「地域」と「都市基盤」の関係についてより深く考えるきっかけになっていたら嬉しいです。そして、この経験が今後の修士論文や研究活動にも活かされることを願っています。

(谷内)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,地域づくり,視察受入 — aozorafoundation 公開日 2025年4月7日3:39 PM
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