2018年2月9日(金)、のざと診療所で楽らく呼吸会を開催しました。今回はあおぞら薬局から薬剤師の各務洋平さんを講師に迎え、ぜん息とCOPDの治療薬について勉強しました。参加者は7人(内、患者さん5名(家族の方を含む)、薬剤師1名、スタッフ1名)でした。
楽らく呼吸会では、一年に一度、呼吸器疾患の薬についてのお話を聞いています。患者さんご自身やご家族が普段使っている薬の種類や使い方を確認する機会です。
気管支ぜん息のお薬について
最初に、気管支ぜん息はどのような病気なのかを気道のモデルを使って説明してもらいました。ぜん息は気道が炎症を起こして狭くなり呼吸が苦しくなってしまう病気で、ちょっとした刺激にも敏感に反応し、気道が収縮してしまいます。
気道のモデルをつかってぜん息について説明
ぜん息の治療目標として、次のようなことが挙げられていると説明がありました。
- 正常に近い肺機能を維持すること
- 夜間や早朝の咳や呼吸困難がなく十分な夜間睡眠が可能なこと
- ぜん息発作が起こらないこと
- ぜん息死の回避
- 治療薬による副作用がないこと
- 非可逆的な気道のリモデリングへの進展を防ぐこと(※リモデリングとは気道壁が厚くなって、気管支の内腔がせまくなってしまうこと)
お薬と上手に付き合えば、ぜん息が原因で様々なことを我慢することもなく、ぜん息でない人と変わらない日常生活を送れるようになるそうです。「ぜん息だから、咳が出るのは当たり前」というのは大きな間違いだと思って良いようです。
ぜん息の治療薬には、コントローラーとリリーバーの2種類があります。
炎症を抑えることができる「吸入ステロイド薬」というお薬が開発され、お薬の効果は大きくなったようです。公害患者さんとお話していると「昔に比べるとお薬がよくなったから」というお話をよく聞きますが、この「吸入ステロイド薬」の開発がぜん息の治療に与えた影響は大きいそうです。また、ぜん息発作が起きてから発作止めを使うのではなく、発作の前触れの段階で発作どめのお薬を早めに使、早めに使えば発作を小さく抑えることができるとのことです。
発作止めを使うタイミング
COPD(慢性閉塞性肺疾患)のお薬について
続いて、COPDのお薬についてお話をききました。COPDとは、肺への空気の通りが悪くなり、呼吸が苦しくなる病気で、煙草等の有害物質の吸入や大気汚染によって起こります。
COPD にかかると、肺胞が壊れたり、細気管支に炎症を起こして肺機能が低下します。残念ながら、一度破壊された肺を元に戻すことはできませんが、早く病気を発見して治療を続ければ、症状を和らげたり、病気の進行を抑制することが可能です。
COPDの治療
COPDの治療の中心となる薬は、気管支拡張薬だそうです。気管支拡張薬には「抗コリン薬」「β2刺激薬」「テオフィリン」の3種類があり、重症度に合わせて併用していきます。増悪を繰り返すなど症状が重い時やぜん息の合併が疑われる場合には、「吸入ステロイド薬」も使用するそうです。
COPDで使われる薬
吸入薬は正しく吸入しないと治療効果が低下します
今回は、吸入器の体験をさせてもらいました。ぜん息もCOPDも吸入薬が治療の中心ですが、正しい吸入方法を身につけていないと、口に薬が残ったり、肺に少ししか薬が行き届かなくて十分な効果を発揮しないそうです。長期間続けていくうちに自己流になってしまうこともありますので、定期的に見直すことが必要です。
吸入操作のポイントについて説明
様々な吸入器
吸入器には霧になって薬が出てくるpMDI(加圧式定量噴霧吸入器)と、薬が粉になって出てくるDPI(ドライパウダー吸入器)の2種類があります。
pMDI(加圧式定量噴霧吸入器)は、缶を押すことで1回分量の薬液が霧になって出てきます。発作時などの吸気力が低い場合でも吸入しやすいというメリットがありますが、噴霧と息を吸うタイミングを合わせるのが難しかったり、添加物(エタノール)によりむせたりするというデメリットがあります。
エアゾール缶を押すとお薬が霧になって出てきます
pMDIの練習
DPIは、粉末薬剤を専用の吸入器を使用し、自分の吸気によって吸入します。噴霧と呼気のタイミングを合わせなくても吸入が可能ですが、吸う力が弱いと正しく吸入できない、pMDIよりも口の中にお薬が残る割合が高いそうです。今回は、DPIの吸入の練習用の笛をみんなで体験しました。うまく吸入できる力があると笛が鳴るといものですが、みなさん上手に笛を鳴らすことができていました。
DPI練習用の笛
ここ数年で様々な吸入薬が発売されましたが、新薬で良くなる方や、従来の薬が体に合う方もいるそうです。どの吸入薬が自分に合っているのか主治医の先生とよく相談して、適正な吸入薬を継続していくことが大切です。
最後は質疑応答です。参加者の方から「喉が渇くことが多いけれど大丈夫か?」との質問がありましたが、抗コリン剤を服用していると副作用として唾液の分泌が止められてしまい、喉が乾くそうです。そのため、喉が渇くということは薬を適切に服用できていることと考えてもよいそうです。
また、「薬を欠かさずのんでいるつもりでも、いつのまにかお薬が余っている」と話される患者さんもいました。薬が余っている時は薬局に持っていけば、そこで調整してくださるそうです。
どの患者さんもお薬と上手につきあって、病気が原因で様々なことを我慢することもなく楽しい生活を送ってもらえたらと思いました。
参考:環境再生保全機構「セルフケアのためのぜん息、COPDのおもな治療薬」
■次回予定~問い合わせはあおぞら財団まで~
楽らく呼吸会は、患者さん同士、日頃の病気の悩みを交流したり、時には勉強会なども開催しながら、病気と向き合っていこう、またお互いが支えあっていこうという会です。
少しでも興味があれば是非、各診療所に足を運んで、楽らく呼吸会にご参加ください!
・千北診療所……3月15日(木) 14:00~15:30(薬について)
・姫島診療所……3月16日(金) 14:30~16:30(薬について)
今までの楽らく呼吸会の様子はこちらから→楽らく呼吸会
本事業は独立行政法人環境再生保全機構「地域におけるCOPD対策推進のための人材育成・情報発信事業(NPO法人等との協働事業)実施業務」の一環として実施しています。