京都精華大学 環境教育実習2日目 山岸公夫さん(元神戸製鋼職員)
・山岸公夫さん(元神戸製鉄所 職員)
西淀川フィールドワークの最後に、元神戸製鉄所職員であり、訴訟担当者であった山岸公夫さんからお話を伺いました。西淀川公害訴訟を会社側の視点から、裁判に臨む上で起こったドラマや裏話、目指したこと等を解りやすく話してくださいました。
提訴された当時、被告企業10社間で対応組織が準備されたそうですが、企業規模の大小、大気汚染寄与の大小、立地の東西で利害対立が根底にあったため、なかなか一枚岩になれず、その調整役として山岸さんは動いていたそうです。昭和62年頃からは森脇君雄さんら原告側と裏で接触し、「裁判判決だけが西淀川公害の解決方法ではない。他にもうまい解決策があるのではないか」と考えるようになったといいます。その一方で、山岸さんは毎日会社ではなく、被告企業同士で作った会議のための事務所に出勤していたため、社内で忘れられた存在になり出世は有るや無やの状況だったとこぼしていました。その代わり人間として成長しましたと笑っていました。
西淀川公害裁判について、山岸さんは「時代の屈折点における軋みが現れたものであり、この裁判は法的責任追及ではなく、政治的判断が必要な事案だったと思う。だからこそ、この裁判をどのようにして社会的に終わらせるかが大切で、どのような終わらせ方が日本国のためになるかと考えた。」と話していました。
話を聞いている途中で、当時裁判で闘っていたあおぞら財団会長の森脇君雄さんが訪れたことで、さらに興味深くおもしろい時間を過ごせました。森脇さんは山岸さんが裁判について語った「攻める側(原告)の大変さと守る側(被告企業)の心外さ」の「心外」という部分に引っかかったようでした。山岸さんは訴えられた当時の社会背景(「鉄は国家なり」に表せられるような高度経済成長期)のなかで、企業は日本が豊かになるために努力をしてきた。悪いことをしているつもりはなく、みんな頑張っていた。公害に対する法的仕組み築かれていない中で、後付で煙を出すのはダメだといわれるのは企業として腑に落ちない。法で定められていれば企業はきちんと法を守っていた。だから「心外」という言葉が出てきたのだと仰っていました。これに対して森脇さんは納得がいかないらしく、「心外」という言葉が心外だ、と仰っていました。この会話に2人の観点の違いが表れていると思います。学生たちも2人の話に感化されたのか、帰りの電車の中でも「山岸さんの観点は企業者としてのものであり、森脇さんの観点は西淀川に住む生活者としてのものだ。」「裁判後に原告と被告の立場で争っていた二人が同じ空間でいがみ合わず話し合えるのがすごい」などと語り合っていました。
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