あおぞら財団 財団ブログ
公害の歴史Q&A あおぞらイコバ
公害を伝えるための資料整理寄附募集
屋上広告募集
りべら広告募集
Don't go back to the 石炭

    キーワード検索

    アーカイブ

    カテゴリー

    最近の投稿

    最近のコメント

ブログカテゴリー » 国際交流

第54回 IATSSフォーラム研修 1日目(10/19)

IATSSフォーラムの研修で、ASEAN9ヶ国から18名の研修生を受け入れました。

1日目のプログラムの最初は「西淀川公害・地域再生の概要」であおぞら財団の林さんが講義を担当しました。
P1120972
あおぞら財団が設立された経過の紹介と現在取り組んでいる活動が報告されました。
住民と行政との関係性を大切にしながら、
1.環境の観点から自転車に着目した街づくりを推進しタンデム自転車の活動推進の事業
2.大気汚染公害の事実を伝える資料館の事業
3.学校教育との連携の事業
4.フィールドワークの積極的な推進で韓国や中国のNPOとの協力関係の紹介
5.患者さんの呼吸リハビリ促進の事業などに力を注いでいることが話されました。

次の講義は村松昭夫弁護士(あおぞら財団理事長)による「日本の公害訴訟―大気汚染公害訴訟を中心に」の講義で、
1.日本の公害・環境破壊の発生とその歴史
2.公害被害者が裁判を起こした理由
3.公害環境訴訟と賠償理論の前進
4.21世紀に向けた解決すべき公害・環境の課題等が話されました。

 P1120976

講義の冒頭で、直近のNHKが放送したアンコールワットとミャンマーのバカン地域の発掘の活動を通じ、多様な文化や宗教の違いを乗り越えて発展させた東南アジアの歴史的な偉業は現代のEUの活動に匹敵する大きな活動であるとの感想が印象的でした。
今日の研修生の母国である方もいる放送の話だからです。

講義のあと「訴訟の最中に身の危険はありませんでしたか」や「裁判の後、大阪の経済はどのような変化がありましたか」などの質問がありましたが、「日本の法律と環境の中では身の危険はありません」「投資が他の地域に流れるようなことはありませんでした。むしろ、きちんと公害対策を行い、新しい技術を開発したところは日本の自動車産業が示しているように世界でも抜きん出た企業として発展しています」との回答がありました。

公害患者からのお話では、西淀川公害患者会の永野千代子さんから、
ご自身のお子さんが重度の喘息を発症し、西淀川公害裁判の一次原告となったことや、交通事故で死亡してしまったこと。永野さん自信も公害患者と認定され、原告を引き継いで闘いを続けた報告がされました。現在も週に5日も病院通いが欠かせない話もありました。
1

昼食をはさんで、緑陰道路の観察歩行とタンデム自転車の緑道走行とがありました。
観察歩行では、「緑陰道路サロン」の天野さんから
1.緑陰道路がどのように活用されているか
2.四百年以上前、農民が自分達で資金と労働を提供して開削した歴史が紹介され
3.公害の酷い時代に空港までの高速道路の計画を住民が立ち上がって変更させ緑道にしていった経過や
4.緑道の下には大放水路が完成し集中豪雨にも対応できる現状が紹介されました。
2

タンデム自転車は、あおぞら財団の鎗山さんが先導し福漁港の近くまで走行を経験しました。

1

参加者は晴天の下で自転車を大いに楽しみ、公害発生源の合同製鉄所の話や、淀川の水面よりかなり下になっている住宅を見ることができ、防災の重要さの説明を受けました。

財団へ帰ってから三つのグループに別れ、今日のまとめを行いました。今日の経験を踏まえ、参加者の各国での公害や環境問題の現状と市民の関わり方が発表されました。
3

Aグループ
・環境の問題はきちんとしたプランと市民との合意が重要
・人々の意識を高めることが大切で、署名運動などは大切であり、市民が自ら立ち上がっての裁判は重要
・予算も支援も大切である
自国の問題として
・廃棄物の処理や天然資源の減少に直面している
・シンガポールではマレーシアなど外国からの大気汚染がある
・環境に対する法律や基準が必要である
・ベトナムでは「環境警察」のシステムがある
・教育カリキュラムが重要、職場でも環境問題の共有を図っていきたい

Bグループ
・環境とコミュニティと社会のバランスが大切
・子ども達の将来を考えるとき環境問題はとても重要
・市民は政府の対策を待つのではなく、時には自ら立ち上がることも重要だ
自国の問題として
・自国には土壌汚染としてカドミウムの汚染問題がある
・ミャンマーやタイでは騒音の公害がある
・不法な森林伐採がある
・モリタリング評価を第三者機関でやりたい

Cグループ
・今日は協力、弾力性、都市の開発と青空、環境の活動とESDの大切さを学んだ
自国の問題として
・騒音、廃棄物の汚染、紫外線の照射、大気の汚染などがある
・人間の健康だけでなく、農産物に関しても影響が出ている
・人々の意識を変え、規則を作る
・自然災害に対する対策が急がれる

4

最後にあおぞら財団の藤江事務局長は「今日参加の皆さんが、各国の大統領になれば公害は無くなると思う。西淀川はいろんな人々との共同に苦労しました。この地域は公害のデパートだったが、被害者の声を大切にして困難と向き合い、これが財団の活動の原点だった。この3日間の経験で深めてください。」とまとめられました。

3日間の予定です。そこからリンクで他の日も見に行けますので、ぜひ見てみてくださいね。
・1日目 裁判のお話や患者さんのお話を聞き、タンデム自転車で散策。
・2日目 43号線で説明を受け、あおぞら苑や大阪ガスへ。
・3日目 グループワークを行い、意見交換や提案作りをした上で発表へ。

(天野)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,国際交流,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2016年3月29日5:42 PM

3/10 中国環境NGO研修受入 2日目

3月10日(木)は中国から来た11人の人達とともに環境問題への取り組みを肌で体感するべく、西淀川一帯をサイクリングでフィールドワークしました。
みなさん好きな自転車にまたがり歌島橋交差点近くの大野川緑陰道路からスタート。
緑陰道路→淀川堤防→大野せせらぎの里→国道43号線→あおぞら苑→あおぞら財団といったルートを自転車で駆け抜けました。

栗さんは自転車に乗たことがないそうで、タンデム自転車の操縦席に同財団職員が乗り、栗さんは後ろに乗ってサイクリングを満喫しました。

P1160767

緑陰道路
「昔は川だったと聞いて驚いた」「人と自然のつながりを感じた」など中国の方々は非常に興味を持たれていました。とくに実際に川が流れていた部分を青色にペイントして自転車専用道路にするという発想がすごいという意見がありました。

P1160775

淀川堤防
見晴らしの良い堤防で、かつて公害問題のあった工場の話にみなさん耳を傾けています。実際の場所に行くことで写真や説明ではわからないことを実感してもらいました。

P1160782

大野せせらぎの里
下水処理した水をさらにきれいにする場所だと説明すると「ほんとに?」という反応をしている方がたくさんいました。

P1160796

国道43号線
自動車の排気ガスなどによる汚染を測定したり、大気汚染を除去する設備を間近で見て学びました。

P1160799

あおぞら苑
そして最後はデイサービスセンターのあおぞら苑を訪問。中国で福祉の仕事に就いているという李明叶さんは日本の福祉について興味がありたくさん質問をしていました。見学以外にもお年寄りの方々と一緒に卓球をして楽しみました。

P1160816

P1160832

財団に戻り今日のフィールドワークの意見交換をして日中公害・環境問題に関する研修プログラムは閉幕しました。ここからはフィールドワークの感想や意見をご紹介します。

P1160844

邓妍 Deng Yan氏(天津緑領・プロジェクト職員)
昨日は様々な資料を見ることができて訴訟についての勉強ができた。

董剑 Dong Jian氏(天津緑領・主任)
あおぞら財団の仕事の大変さがわかった。日本で学んだことを中国でも伝えていきたい。今日のイベントは色々な人と交流できて素晴らしい環境教育だと思う。

廖帆 Liao Fan氏(北京市京瑞世纪教育科技中心・教師)
初めて日本に来た。素晴らしい活動に参加できて嬉しい。自転車で人と自然のつながりを感じることができた。父が中国で約20年も自然保護の活動に精力を出していて、同じような境遇にあった患者会の方々を尊敬した。またあおぞら財団を見学して、父に対する理解度がさらに深まった。

李明叶 Li Mingye氏(済南市基愛社会活動サービスセンター・主任)
福祉関係の仕事をしているが、今日の活動を通じて自分の仕事にアイディアが生まれるような気がした。人と自然のお互いの尊重は環境にも福祉にも同じことが言える。
<質問>日本人はよく自転車に乗りますか?
<回答>大阪は平地なので自転車を使う人は多いが、まだまだ自動車を使っている人が多いので財団は自転車を使うことを促している。

李 力(Li Li)氏(北京市朝阳区環友科学技術研究センター・主任)
私は財団に何度も足を運んでいるから、今回連れてきた若者たちには事前に財団についてインターネットやビデオを使って紹介をしていたが、実際来て体験してもらうことが一番だと感じた。国情は違えど、何回も財団に足を運び、細かなところまで学び、実際に中国でやっている。(廃油石鹸、フードマイレージ等)もっと様々な事を中国に持って帰り、広めていきたいと考えている。

肖嘉凤 Xiao Jiafeng氏(北京市京瑞世纪教育科技中心・教師)
このような活動ができて非常に有意義だった。あおぞら苑の見学と工場の煙についての訴訟がとくに印象に残った。

张国兵 Zhang Guobing氏(天津緑領・プロジェクト職員)
去年に今働いている会社に入社したばかりで今回日本に来て大変勉強になった。日本に来る前よりもたくさんのことを知ることができた。昨日と今日で西淀川の問題が理解できた。そして緑陰道路が昔は川だったということにとても驚いた。実際に川が流れていた部分を水色に塗装し、自転車専用道路にするアイディアがとても面白いと思った。

郭永启 Guo Yongqi氏(済南市緑行斉魯環境保護公益サービスセンター・主任)
初めて日本に来ました。そして日本の生活や文化について興味深く観察していました。昨日は学者や弁護士から学び、今日は実際の場所から学びました。歴史だけではなく、今の患者さんの様子を見たり社会全体のつながりを見ることが出来て良かった。

栗梅 Li Mei氏(北京市朝阳区環友科学技術研究センター・教師)
日本に来て私の意識はすごく変わった。これからも周りから様々な事を学び、自分にできることがあればやっていきたい。初来日、初海外、初自転車だった。

丘美玲 Qiu Meiling氏(天津緑領・プロジェクト職員)
緑陰道路は歴史的にも観光的にも非常に良い場所である。ひとつひとつの花に名前の看板が掲示されているのが素敵だった。私は財団が有意義な活動をしていると信じている。

张頔 Zhang Di氏(北京市朝阳区環友科学技術研究センター・副秘书长)
2013年以来ここに来てはたくさんのことを学んだ。今の中国はここ2,3年で環境NGOが評価されてきているので嬉しい。私は中国の環境に対するイメージの悪さを変えるため力を入れている。西淀川のように良いイメージにできるように頑張りたい。

意見交換は30分で終わる予定だったのですが、みなさんそれぞれ環境問題に対する想いが大きく、なんと1時間も延長して議論を続けました。とても有意義な時間でした。

P1160785

(記・中島)

本事業は環境省委託平成27年度大気汚染経験等情報発信事業の一環です。

 

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,国際交流 — aozorafoundation 公開日 2016年3月28日3:06 PM

3/9 中国環境NGO研修受入 1日目

3/9 中国環境NGO研修受入 1日目

P1160667

あおぞら財団では、中国の環境NGOメンバーを日本に招き、研修プログラムを実施しています。
今年度は3月9日(水)~10日(木)の2日間に、中国から11人が西淀川区をおとずれました。

今回の「日中公害・環境問題に関する研修プログラム」では、西淀川地域をフィールドに研修をおこなうことで、日本での大気汚染公害の経験を中国の環境NGOメンバーに知ってもらい、環境問題の解決に資することを目的としています。

訪問メンバー:
1.李 力(Li Li)氏(北京市朝阳区環友科学技術研究センター・主任)
2.张頔 Zhang Di氏(北京市朝阳区環友科学技術研究センター・副秘书长)
3.栗梅 Li Mei氏(北京市朝阳区環友科学技術研究センター・教師)
4.廖帆 Liao Fan氏(北京市京瑞世纪教育科技中心・教師)
5.肖嘉凤 Xiao Jiafeng氏(北京市京瑞世纪教育科技中心・教師)
6.郭永启 Guo Yongqi氏(済南市緑行斉魯環境保護公益サービスセンター・主任)
7.李明叶 Li Mingye氏(済南市基愛社会活動サービスセンター・主任)
8.董剑 Dong Jian氏(天津緑領・主任)
9.丘美玲 Qiu Meiling氏(天津緑領・プロジェクト職員)
10.邓妍 Deng Yan氏(天津緑領・プロジェクト職員)
11.张国兵 Zhang Guobing氏(天津緑領・プロジェクト職員)

プログラムのようす:
3/9(水)午前
あおぞら財団にて、オリエンテーションをおこないました。研修の目的、スケジュールを説明した後、西淀川公害やあおぞら財団の活動について
DVDやスライドにて紹介しました。
IMG_6093

IMG_6095

そして、あおぞら財団付属「西淀川・公害と環境資料館」(エコミューズ)や書庫の見学をおこないました。
「公害 みんなで力を合わせて―大阪・西淀川地域の記録と証言―」のパネル、裁判資料、患者の証言DVDなどを見ました。

IMG_6097

IMG_6099

昼食をはさんで、午後からは、自転車・歩行者専用道路「大野川緑陰道路」と「歌島橋交差点」の見学、説明がありました。
大野川緑陰道路は、農業用水路が、ドブ川となり、汚染がひどい時期がありましたが、住民の力で緑の道となり、今では、区民の貴重な宝です。

IMG_6124

歌島橋交差点は五差路の大きな交差点で、大型車の交通量が多く、大気汚染も問題になっています。

IMG_6131

次に、西淀川公害患者と家族の会の山下明さん、晴美さんご夫婦による、大気汚染と被害の実体験のお話を聞きました。

IMG_6139

P1160652

さらに、同会会長の森脇君雄さんや事務局長の上田敏幸さん、神戸市外国語大学の櫻井次郎先生、あおぞら財団の藤江徹を交えての意見交換会をおこないました。

P1160660

P1160698

P1160693

中国のメンバーからは次のような質問がありました。
・公害患者への保障は十分だと思うかどうか?
・ぜん息は、子どもや孫への遺伝性はあるのかどうか?
・妊娠している場合、胎児への影響はあるのか?
・患者会とあおぞら財団の関係はどういったものなのか
・他の地域との連携はどうなっているのか?
・環境訴訟にかかわる弁護士はどれぐらいの割合がいるのか?
・長く闘ってきて、一番難しかったことは何か?

それぞれの質問に答えながら、最後に森脇さんから、
「どの国にも大気汚染による被害者がいる。
被害者を探し、科学的分析、医者の協力、専門家の協力を得ながら、進めることが大事。
経済よりも生命を大切にし、みんなが自由に発言できる社会であること、
一歩でも、二歩でも進めていこう」という言葉がありました。

さらに、村松昭夫弁護士により、西淀川公害裁判やアスベスト裁判の話がありました。
村松弁護士はこの日、大津地裁が高浜原発運転差し止めの仮処分を出したことにふれ
「3.11の福島原発事故前には日本の司法はこのような決定は出さなかっただろう。
公害はどれもそうだが、起こってしまったら取り戻せない。環境についてもそうだし、
人間への被害も健康だけでなく仕事や学校へ通えなくなるなど生活全般に影響する。
そうした被害を想像する力をこの研修で養って、中国に持って帰ってほしい」
と語りました。

P1160726

この後、「日中環境問題サロン2016―日中の理解と協働に向けて:中国環境NGOの活動を聴く」が
開催されました。

(記・鎗山)

つづく

本事業は環境省委託平成27年度大気汚染経験等情報発信事業の一環です。

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,国際交流 — aozorafoundation 公開日 2:59 PM

中国/北京 訪問記(2016.3)その3 環境NGO 潘氏に聴く ~中国重金属汚染地図プロジェクトとは?~

今回の面談で三人目となる潘慶安氏からは「中国重金属汚染地図プロジェクト」について話を聞きました。これは、同プロジェクトは2年前からスタートし、重金属汚染についての公開情報、現地調査とその結果をインターネット上で公開しています。湖南省・広東省などの血鉛事件(鉛汚染事件)の情報が集約されています。

P1160948

潘氏(右端)からプロジェクトの説明を伺う

 

中国金属汚染地図

 「中国重金属汚染地図」http://www.zhongjinshu.epmap.org/ngo

中国国内でも、都市部の子供への鉛汚染については調査があり、救済措置もある場合がありますが、農村部など田舎のほうでは放置され、情報すらない場合が多いそうです。このプロジェクトを通じて、まずは、情報を公開し、これを起点として、被害者の救済につなげていくことを考えています。

P1160950

被害が発生していた事例の写真

 

今後は、準備調査→血液調査→資金援助→入院費補助などを進め、医者との協力関係を深めていきたいと考えています。しかし、被害者への支援は、実際には多くの困難があります。例として、ある裁判では206万元の賠償請求が最終判決では2万6千元となりました。これは、法律が補償の基準を定めていないためです。そもそも、子どもの鉛中毒被害の損害程度を測る技術や規定がなく、これは司法鑑定にも影響しています。

 

この取り組みも、微博などのSNSを活用することで情報公開をすすめ、政府機関との連携を見据えながら、環境汚染の改善、被害者の救済につなげていくことを目指しています。調査や救済のための資金もクラウドファンディングなどを通じて集めています。

 

中国クラウドファウンディング

※血铅儿童救助(クラウドファンディングのページ)

潘氏は、日本の重金属汚染対策の取り組みにも強く関心を持っており、自身の微信(We Chat)でも紹介してくれています。日中環境NGOで、互いに協力して、公害のない世界を目指しましょう。

(当日の微信We Chat)

北京市内の様子

IMG_8706

北京市内のいろんな所にスローガンが掲示されています。

IMG_8814

建設中のビル群もいくつか見かけました。

IMG_8751

北京大学内では、自転車置き場が一杯でした。

IMG_8794

ナンバープレートには「老人代歩車」って書いてあるんですけど、どういう意味なんでしょうか?

IMG_8791

一人乗り(子どもと二人乗り)?自動車

IMG_8787

高速道路沿いには、桜が咲いてました、春ですね。

 

・中国/石家荘 訪問記(2016.3)その1 環境弁護士 馬倍戦事務所を訪ねる

・中国/北京 訪問記(2016.3)その2 環境NGO 趙氏に聴く ~「好空気保衛侠」プロジェクトとは?~

 

(記:藤江徹 

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,国際交流 — aozorafoundation 公開日 2016年3月26日7:14 PM

中国/北京 訪問記(2016.3)その2 環境NGO 趙氏に聴く ~「好空気保衛侠」プロジェクトとは?~

続いて、訪れたのは北京を拠点に活動する趙亮氏の事務所です。マンションの一室では、学生スタッフ2名がパソコンに向かいながら、熱心に仕事を行っていました。ここの代表である趙氏とは、3年前(2013.2)に、天津にて、活動についてのお話を伺っています。

IMG_8734

事務所からの眺め

 

今回は、趙氏を中心としてNGOの連携・協力によって実施されている「好空気保衛侠」プロジェクトについて伺いました。この取り組みは、各地で①大気汚染源のモニタリング調査、②環境保護機関への情報公開請求や意見交換、③SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した情報公開・交流を行うプロジェクトです。

IMG_8729

「好空気保衛侠」プロジェクトについて伺う(右端が趙氏)

 

中国国内各地に存在する深刻な大気汚染源(鉄鋼企業、発電所、石油化学工場など)への現地調査を行っています。調査を通じて、違法行為を確認した場合、すぐに当地の環境保護機関に通報します。こうした調査後に改善したとみられる企業、現在対応中の企業がいくつかでてきています。

また、行政とNGOが対立する立場で開かれる会議ではなく、NGOが環境行政担当者と率直に意見交換する対話の場として活用される会議(約会)を開催しています(現在まで、中国各地で36回実施)。
今後は、更に活動範囲を広げ、中国各地(東北・華北・華東・西南)に「フィードバックセンター」を作っていく構想をもっています。

P1160927

約会の様子が、環境保護局の微博で報告されています。

 

ここのメンバーは、80、90年代以降生まれの若い人が多く、微博(中国版ミニブログ)、微信(中国版ツイッター)などSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を積極的に活用しています。活動資金については、基金会等からの補助金、事業活動・調査へのクラウドファンディングを活用しています。

北京での大気汚染の状況について尋ねたところ、「北京オリンピックの後、また大気汚染がひどくなった。一時的な改善措置に過ぎなかったことが原因。しかし、以後に関心が高まり、対策が徐々に強化される一つのきっかけにはなったのではないか。」と話し、現在については「最近は、大気汚染改善への兆候が見られるようになってきている。例えば、鉄鋼生産能力が余っている。河北省でも、中小の鉄鋼企業が生産停止になっている。鉄鋼生産や石炭使用量の減少傾向は、大気汚染の改善には効果をもたらす。特に、石炭燃焼は大気汚染の60%の要因となっているので、効果は大きいだろう。他にも、エネルギー効率の改善、新環境保護法による企業への取り締まり強化、公衆参加が無視できなくなっていること、環境保護関係の投資が増えていること、など大気汚染改善に向けた流れは確かにある」。さらに、今後は「2022年に冬季オリンピック(北京市・河北省張家口市共催)があるので、そこまでにはなんとかしたいと政府も対策を一層強化するのではないか。しかし、実現のためには様々な部門が協働していくことが重要だろう。」と話した。

P1160941

北京の大気汚染の現状について伺う

 

今回の訪問で、3年前と比べて、趙氏をはじめとする環境NGOの大気汚染問題に対する活動については、大きく進展していることがわかりました。当時は大気汚染問題への関心が高まり、簡易測定器による大気汚染測定がスタートしたばかりでした。現在は、現地調査と現地の環境保護機関との「約会」を中国国内で積極的に頻繁に実施し、その情報をSNSを用いて広く市民に知らせることで、より正確な情報公開と対策を促しています。これらの活動は、公衆参加のために有用なSNSという手段を用いて汚染源を監督し、政府との連携による対応を促す新たな環境ガバナンスへの実践となっています。

 

趙氏は、日本・西淀川地域での大気汚染公害対策の取組みにも強く関心を持っており、自身の微信(We Chat)でも紹介してくれています。日中環境NGOで、互いに協力して、青い空を取り戻しましょう。
(当日の微信We Chat)

IMG_8713

北京の自転車等の走行ゾーン

 

IMG_8703

電動バイクに取り付けられたカバー

 

参考:中国・北京・天津訪問記(2013冬)(ブログ)

・中国/石家荘 訪問記(2016.3)その1 環境弁護士 馬倍戦事務所を訪ねる

(記:藤江徹)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,国際交流 — aozorafoundation 公開日 2016年3月25日9:32 PM
« 次のページ前のページ »