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ブログカテゴリー » 資料館(エコミューズ)

大阪市北ブロック新任教員研修を実施しました(8/17)

8月17日(水)に咲くやこの花中学校・高等学校で2015年度に採用された教員の方、76名に研修を行ってきました。今回は福島区・此花区・西淀川区の新任教員研修の方が対象で、西淀川公害の説明と語り部さんのお話に加え、ワークショップを実施しました。

さすがに70人を超える参加者だと研修室はいっぱいいっぱいでした。
オリエンテーションの後、あおぞら財団の栗本の進行のもとでアイスブレーキングを行いました。参加者の方には最初に配布されていたA4用紙にマーカーで、
・名前
・夏といえば
・1学期を振り返ってちょっと困っていること
・人生で一番印象に残っている学び
を一言、記入してもらい、近くの人と自己紹介をしてもらいました。初めて会う人や、顔見知りの人もいて、みなさんとても積極的にいろいろな話をしている様子がうかがえました。

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参加者の前でアイスブレーキングの説明。


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穏やかな様子でみなさん自己紹介を行っています。

アイスブレーキングのあとに、「帰国した子どもの教育センター校」である西九条小学校の渡邉勇さんの講演が行われました。渡邉さんからは日本語教室の紹介と学習支援についての話がされました。昨年度、大阪市の小中学校に編入学した児童生徒のうち、221人が日本語指導が必要だった現状から、実際に日本語教室ではどのような授業が行われているのか。また、どのような教材を利用するといいのかなどの話が中心となりました。
実際に帰国や来日した児童生徒を受け持っている先生もおられ、熱心に話を聞いていました。いろいろな教材も教室後方に展示され、休憩時間などに目を通している方も多く見かけました。

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「帰国した子どもの教育センター校」の渡邉勇さん。


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渡邉さんの講演を真剣に聞いています。

続いて、栗本から「環境と人権」というテーマで研修が行われました。西淀川大気汚染公害と西淀川という地域についての説明を簡単に行った後、ビデオ「西淀川公害裁判を闘う」を見てもらいました。

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あおぞら財団の栗本による、公害地域の説明やビデオの補足。

その後、「西淀川公害患者と家族の会」の前田春彦さんと事務局長の上田敏幸さんから、当時の被害の話やご自身の体験についてお話をしてもらいました。前田さんは幼少期から続くぜん息の話や、当時の思いやしんどさを話してくれました。仕事がしたくても出来ない辛さや、仕事中に中指の半分を失い障害者になったことなど話をしていると、会場にいる参加者は真剣な様子で前田さんの話に耳を傾けていました。また、ぜん息や肺気腫の友人がいても公害患者として認められていない事実が辛いと胸の内を語ってくれました。上田さんからは、あおぞら財団の設立の話や、現在の患者さんの話などをしてくれました。また、その上で未認定患者に対しても救済の仕組みが欲しい、国や自治体にどうにかして働きかけたいと思っているとお話されました。

質疑応答では、御幣島に住んでいる方から「まだ西淀川ではPM2.5について環境規準が守られていないという話だった。どのように公害問題を解決すればいいのか」という質問が出ました。
この質問に対し上田さんは、「とても回答をするのが難しい質問。私たちは人の暮らしと環境をスローガンにしてきた。世の中にうねりを作っていくには、患者が中心であるのではなく、多くの人たちが『何が出来るだろうか』と考えることが近道なのではないかと思う。今日の出会いをきっかけに、何が出来るか考えていくことが大切なのではないだろうか。世間が公害について関心を持ってくれることが大切ではないだろうか」と回答されました。

最後に前田さんが、今でもぜん息で苦しんでいる患者さんがいて、小さい子でもぜん息の子がいる事実を話してくれました。その上で、未認定患者への補償制度がない今、せめて医療費だけは無料にするなどの医療制度を作って欲しいと話してくれました。

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自身の体験について話をしてくれた、前田春彦さん(写真左)


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現在の患者さんの話について話をしてくれた上田敏幸さん(写真右)

その後、6人ぐらいのグループを作ってワークショップを行いました。
模造紙の真ん中に、
・公害病にかかったら
・もし大気汚染を放置したら
という、どちらかのテーマから連想図を書き出せるだけ書き出し、その影響を想像して分析していくというグループワークです。参加者のみなさんは模造紙いっぱいに次々と連想したことを書き出していきました。話し合いながら書き出すグループや、もくもくと書き出すグループなどもありました。ですが、どのグループもいろいろな想像や、繋がりを発見していく姿がうかがえます。
「公害病にかかったら」というテーマで考えたグループでは、「学校に通いにくい」→「友達ができない」→「相談ができない」という風に、子どもの状況を想像しているところもありました。また、「引っ越ししたくなる」→「それが解決?ふるさとを捨てる?」→「納得できない」という風に、患者の気持ちに共感する連想図もありました。
「もし大気汚染を放置したら」というテーマでは「元に戻すのにコストがかかる」「医療費が増える」といった経済面に注目した意見や、「人口が減る」→「まちが廃れる」というように、自然環境への被害だけでなく社会へも影響が出ることへの想像力を働かせた意見も出ていました。
2グループから全体に発表してもらいましたが、その中には西淀川で教員をしている方もいました!

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もくもくとたくさんの連想図を書き出しているグループです。


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こちらのグループは、班のメンバーでいろいろと話をしながら書き足していました。


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実際に書いた連想図を示しながら、意見の共有。

最後に、研修全体のまとめとして、日本語がわからない子どもや深刻な病気になった子どもなどを想定し、「困難に直面する子どもに関わる心構え」を各自がA4用紙に書くというふりかえりの時間をとり、今回の新任教員研修が終わりました。
いろんな子どもが増えている中、新しく先生になった参加者のみなさんはとても意欲的に参加をしていました。学校で授業をすることだけでも大変だと思いますが、最後に書いた困難に直面する子どもに関わる心構えを思い出しながら、頑張ってくれたら嬉しいなと思いました。
また、私も公害だけではなく、多くの問題や困難と向き合っている人たちとどう関わっていくか、その時の心構えをしっかり考えていきたいと思いました。

(松ヶ平)

王燦発先生、西淀川・公害と環境資料館を訪問(8/6)

日中公害問題サロンでの講演を終えた翌日の8月6日(土)、王燦発先生(中国政法大学教授)が、西淀川・公害と環境資料館を見学に来られました。

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王先生は、1999年には「公害被害者法律支援センター(CLAP)」(http://www.clapv.org/)を立ち上げ、中国の公害被害者に対する訴訟支援を行うなど、長年、中国の公害・環境問題の解決に取り組まれてきた方です 。

あおぞら財団も、2001年以来、日中の環境問題に関しての助言をいただいたり、環境訴訟についての意見交換、環境NGOの紹介など、様々な機会を通じて、お世話になっている方です。

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西淀川の大気汚染公害訴訟の経緯や保存している資料の説明をしました。

中国でも、こうした公害・環境問題に関する資料を保存・閲覧できる資料館を設立できないか、と考えておられます。

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資料館の蔵書には、王先生からいただいた資料も登録されています。

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中国の環境訴訟をまとめた著書(2015.4)もいただきました。

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おまけ)見学の後、屋上から、大阪の夏の名物・花火(なにわ淀川花火大会)を楽しんでいただきました。

記:藤江

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,国際交流,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2016年8月23日7:39 PM

毎日新聞に掲載されました「公害、語り部から教材 あおぞら財団、住民運動を追体験」

2016年8月21日付 毎日新聞朝刊大阪版に「大阪・西淀川の大気汚染公害、語り部から教材 あおぞら財団、住民運動を追体験 /大阪」と題して、
現在作成中の教材について記事が掲載されました。
教材に関心がある方は、ご一報くださいね。

http://mainichi.jp/articles/20160821/ddl/k27/040/226000c

大阪市西淀川区で起きた大気汚染公害を次世代に受け継ごうと、公害訴訟の和解金で設立された公益財団法人「公害地域再生センター」(あおぞら財団)が、高校や大学の授業で使える教材づくりに取り組んでいる。いまも被害患者たちが教育現場で語り部活動を続けているが、高齢化が進み、限界もある。教材を普及させることで、より多くの人たちに公害の経験を届けたいと考えている。【大久保昂】

 「企業に謝ってほしくて裁判をすることにしたんです」

 「裁判をすることで西淀川の評判が下がるんじゃないですか?」

 京都市北区の佛教大紫野キャンパスで7月にあった「日本現代史特講」の授業。学生約30人が、西淀川で公害が深刻化したころの住民になったつもりで発言していた。配られた教材に従い、国などを相手に裁判を起こし、和解に至るまでの住民運動を追体験した。

 教材のストーリーは、あおぞら財団研究員の林美帆さんと栗本知子さんが中心になって、語り部から聞いた話を踏まえ考案した。林さんは佛教大の非常勤講師も務めており、追体験型の教材を初めて授業で使った。

 住民運動の先頭に立つ知識人。ぜんそくで子どもを亡くし、裁判を起こした住民。排煙の削減を求められた工場経営者。学生たちに割り当てられた役には、それぞれ実在のモデルがいる。住民間で利害の対立がありながら、最後は「良い地域をつくりたい」という思いでまとまった西淀川公害の住民運動は、大気汚染公害を巡る運動の成功例とされる。3年生の佐伯拓夢さん(20)は「相手の立場に立って考えたり、人間が持っている根本的な良心を信頼したりすることが大切だと思った」と感想を述べた。

 財団は小中学校へ出前授業に赴いたり、現地を案内するツアーを企画したりして公害の経験を伝えてきたが、多くの部分を被害患者の語り部活動に頼ってきた。今後は教材を用いた環境学習も普及させることで、公害の経験を広く受け継いでいきたい考えだ。

 教材は改良を加えて来年中に完成させ、高校や大学での活用を呼びかけるつもりだという。林さんは「西淀川の住民運動は、立場の違う人たちが共に行動できることを示した。一つの見方に導くのではなく、多角的に考えられるような教材にしたい」と話している。

ロールプレイ「もしあなたのまちで公害が起きたら?」をJICA関西で実施

去る8/9、JICA関西を会場に開催された「第13回多文化共生のための国際理解教育開発セミナー」で分科会を担当しました。

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西淀川でつくられた地域再生プランを紹介

 

国際理解教育・開発教育に興味のある教職員・学校関係者の方を対象としたセミナーで、昨年度より地球環境基金の助成を受けて取り組んでいる、大気汚染公害を題材とした学習プログラムの整備事業で開発したロールプレイ教材を使いました。

簡単な自己紹介の活動をした後、さっそくロールプレイです。
設定は下記のようなものです。
–[ロールプレイの設定]–
203x年、あなたの住むまちで、原因不明の大気汚染物質らしきものによる健康被害(呼吸器の疾患)が発生しています。
住民の間では「X工場(煙突・換気口あり)のせいではないか?」という噂が流れています。工場では、様々な製造・研究を行っています。
今日は市役所による環境調査の結果報告会です。調査では原因が明らかにならなかったという説明が終わったところです。その後、集まった地域の人たちがそれぞれの立場から要望を発言する時間が設けられました。
—-

グループで、5つの役割をくじ引きで決めてもらい、カードに書いてある情報を読んで役になりきります。
設定されている役割は下記の5つです。
1.市役所の環境担当係長
2.住民A(子どもが病気に)
3.X工場の経営者
4.医者
5.住民C(X工場で働く)

話し合いの目的は、「同じまちに住む者として、現状に対して何をすべきか、合意形成を図る」。

司会進行役の役所の担当係長さんが口火を切り、ロールプレイを開始すると、住民Aは「ただちに工場の操業を止めてほしい」と訴えます。さて、果たして・・・。

これ以上はネタバレになってしまいますので詳細を控えますが、各グループの参加者のみなさんはそれぞれ役になりきって、喧々諤々、15分経っても時間は足りないほど白熱した議論になっていました。

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ロールプレイの後、実際に西淀川で大気汚染が激甚だった頃、何が起きたか、また住民たちはその状況の中でどんな行動をしたのか、簡単に解説しました。

異変に気付いた教員が手作りの環境調査をして子どもたち自身にまちの状況を知らせたこと、
工場や行政に直接働きかけて対策を求めたこと、
それでもすぐに解決しない困難な状況の中で司法に訴えたこと、
患者自身が熱心に勉強し、状況を理解しなんとか解決しようと行動したこと、
全国の患者とつながり、また広く被害を知らせて共感を呼び、
最終的に勝利判決を受けた後に、地域再生の願いを掲げて和解に至ったこと・・・、などです。

今回の参加者のみなさんは特に公害について関心を持って参加してくださった方が多かったのですが、終了後のアンケートでは、小学校高学年から使える教材だとご好評をいただきました。

この教材は解説資料を加えて編集し、近いうちにお披露目する予定です。乞うご期待!

(参加者の感想)
・ワークショップではあったが「もし自分にそういうことが起きたら」ということを考えさせられ、また、西淀川の市民力を知ることができて、結局は当事者同士のまとまりであったり、次の世代を含めたヴィジョンが大切だと思った。
・「203x年」となっているので、本当に将来、自分の身におこるかもしれないと思える内容で、授業で、大変よかったです。
・いろいろな立場で考える大切さを実感できてよかった。
・関西の公害は子どもたちにとっても身近で親しみやすいと思った。ありがとうございました!
・公害についてもっと勉強したい!知らなければと思える分科会でした。

(栗本)

 

資料館10周年企画の研究会を行いました(8/1)

あおぞら財団付属の西淀川・公害と環境資料館エコミューズが10周年を迎えました!

10周年を記念した研究会をあおぞら財団職員やスタッフ、大阪市立大学の除本ゼミのみなさんで行っております。
8月1日(月)は第2回目の研究会を行いました。

前回は6月27日に西淀川公害患者と家族の会会長であり、西淀川公害裁判原告団長である森脇君雄さんから聞き取り調査をしました。
その時の話から今回はどのような話を聞こうか、またどんな話を聞いていきたいかなどを相談しました。
いろいろと相談をした後、今回も前回に続き森脇君雄さんからヒアリングを行いました。
資料館に保管されている資料を出してきつつ、森脇さんを囲んで1時間近く質問をしながら話を進めました。

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当時の話をしてくれている森脇君雄さん(写真右)

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みなさんリラックスした様子で聴き取りが始まりました。

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森脇さんの話では多くの財団にある資料を見つつの研究会となりました。

この研究会は今後も森脇さんに昔の話や裁判当時の話を聞いたりしながら、月に1回程度のペースで進めて行く予定です。
今まで聞いたことがなかったことや、当時の時代背景についてなどのいろいろな質問が出来る良い機会となりました。
次はどんな話を森脇さんから聞けるか、今からとても楽しみです。

(松ヶ平)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2016年8月3日9:56 AM
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