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ブログカテゴリー » 環境学習

2023年6月の二酸化窒素の自主測定結果の報告

2023年度の西淀川区内の二酸化窒素の自主測定結果の報告です。

あおぞら財団では、年に2回、西淀川区内で二酸化窒素(NO2)の自主測定をしています。この自主測定は、大阪から公害をなくす会が主体として大阪府下で行っている調査に協力する形で行っています。

西淀川区はかつて公害の街と呼ばれ、長期間にわたって大気汚染物質濃度が高く、甚大な健康被害をもたらしました。累計7,000人を超える方が公害病として認定されています。西淀区内には環境省や国交省が測定している測定局がありますが、そういった場所以外の大気汚染がどうなっているのかを把握するために、独自で測定を続けています。

西淀川区では、道路沿道環境の大気汚染を改善するために、道路管理者と公害患者が共に話し合う場として西淀川道路連絡会を開催しています。この連絡会は、公害裁判において、原告(公害患者)・国・旧公団(現・高速道路会社)との間で交わされた和解条項に基づいて設置されたものです。今までにPM2.5の測定の早期開始、国道43号沿道の環境対策、環境ロードプライシング等の様々な対策を行っています。NO2の自主測定はこれらの対策の成果の評価ともいえます。

 

■測定概要

測定方法:大気中のNO2濃度を測定できる「天谷式カプセル」を用います。24時間暴露したカプセルにザルツマン試薬を入れ、NO2を化学反応、発色させ比色分析により濃度を測ります。
測定場所:西淀川区内 5か所
測定日:

2018年度 6月7日(木)17時~8日(金)17時
12月6日(木)18時~7日(金)18時
2019年度 6月6日(木)17時~7日(金)17時
12月5日(木)17時~6日(金)17時
2020年度 6月4日(木)17時~5日(金)17時
12月2日(木)17時~3日(金)17時
2021年度 5月20日(木)17時~21日(金)17時*
12月4日(木)17時~5日(金)17時
2022年度 6月17日(木)17時~18日(金)17時
12月1日(木)17時~2日(金)17時
2023年度 6月1日(木)17時~2日(金)17時

*ソラダス2021にて測定

■測定結果

 単位(ppb) 2018年6月 2018年12月 2019年6月 2019年12月 2020年6月 2020年12月 2021年6月 2021年12月 2022年6月 2022年12月 2023年6月
1 出来島小学校(国道43号)  43  40 53 21 36 24 33 33 20 25
2 大和田交差点(国道43号)  56  50 66 29 35 36 36 36 46 27 63
3 歌島橋交差点(国道2号)  49  34 50 21 30 23 177 26 34 18 37
4 あおぞらビル前(国道2号)  40  31 46 17 30 23 177 33 26 21 53
5 緑陰道路(エルモ前)  31  21 30 9 12 10 22 16 9 24
測定グラフ

西淀川区内の二酸化窒素の自主測定結果

2020~2022年ロナ禍の影響で二酸化窒素の濃度が低くなるのかと予想しましたが、他の時期と比べて極端に低いということにはなりませんでした。
12月より6月の方が濃度が高い傾向にありますが、2023年6月のデータは特に他の年よりも高くなっています。なお、2023年6月の測定日は、雨量・湿度は、大雨で、ほぼ100%に近い湿度でした。

また、同じ国道43号でも、出来島小は道路沿い、大和田交差点は交差点の真ん中で計測していますので、値がかなり違っています。特に大和田交差点は、2023年6月に 63 ppbと環境基準の上限値を超える値となっています。

自主測定は国道沿いを中心に測定しています。近年、国道43号の交通量は減少傾向にあり、2000年には8万台を超えていましたが2022年には7万台を切っています。大型車の混入率はあまり変化がありませんが、2万3千台を超えていた大型車が1万8千台ほどになっています。自主測定の結果からは、道路沿道対策の効果があるとは言いづらいですが、継続して道路沿道対策をしっかり実施してもらうよう国や阪神高速道路株式会社にはたらきかけを続けたいと思います。

なお、2021.9 月にWHO(世界保健機関)が 0.012ppm 以下という指針を示しています。2023年6月の測定でWHOの指針を下回っている箇所はありません。青い空が当たり前になっていますが、まだまだ見えない汚染は続いているようです。

交通量グラフ

国道43号の交通量

 

※二酸化窒素に係る環境基準(日本):1時間値の1日平均値が40ppbから60ppbまでのゾーン内又はそれ以下であること。

参考:大阪から公害をなくす会「ソラダス・NO2測定運動」

参考:西淀川道路連絡会 道路沿道の環境対策を検討するために、道路管理者と公害患者が共に話し合う場です。今までにPM2.5の測定の早期開始、国道43号沿道の環境対策、環境ロードプライシング等の様々な対策を行っています。

Filed under: あおぞらイコバ,イベント報告・ホームページ更新,環境学習 — aozorafoundation 公開日 2024年1月16日5:34 PM

大阪公立大学「都市基盤計画特論」第3回(12/26)

大阪公立大学大学院の講義「都市基盤計画特論」、西淀川での授業の3回目が12月26日に開催されました。
この授業では、受講生5名が西淀川をフィールドに学びます。授業では4回にわたって西淀川に来る予定です。

 

まずは「ダイヤモンドランキング」という手法による、市民参加に関するワークショップを行いました。

具体的には…
参加者それぞれが、大気汚染が発生しているまちの市長になったと仮定します。
まずは個人で、用意された8つの対策事業の中から、最も重要だと考えるものから順にダイヤモンド型のランキングに並べます。
その後、なぜその順位になったのかをグループで発表しあい、話し合いながら1つのランキングにまとめる、というワークです。

まずは8つの対策事業についての説明を受け、個人でランキングを作成します

まずは8つの対策事業についての説明を受け、個人でランキングを作成します

 

私も一緒にランキングを作成して、話し合いにも参加しました。このワークショップのポイントは、参加者全員の意見を可視化してすり合わせることができる点です。
例えば、私が最も重要だと考えた対策事業を、一方で最も重要ではないと位置付けている方もおられました。その理由を聞く中で、同じ対策事業でも僕と全く違う視点で捉えておられることがわかり、新たな発見が生まれました。多様な価値観を共有し、ある事象を別の角度からも考えることが、合意形成への近道であると実感しました。

全員の意見をすり合わせ、1つのランキングを完成させました

全員の意見をすり合わせ、1つのランキングを完成させました。アルファベットは用意された8つの対策事業です。

 

ワークショップの次に、西淀川区役所政策共創課の西尾さんにお越しいただきヒアリングが行われました。

まずは、区の目標や区の運営方針について、その中で柱となる「共創によるまちの魅力向上」、実際に行われてきたさまざまな共創事業について、などの講義をしていただきました。
その後の質疑応答では、共創事業を起こすうえでの工夫やその後の維持管理など、提案に向けたより具体的な議論が行われました。

議論の中で、「例えば川の堤防1つを取り上げても、防災面でありがたいという意見と、無機質で残念という意見の両方があがる」といったお話がありました。まちづくりを考えるうえで、まさに先ほどのダイヤモンドランキングに通ずる議論があがりました。

西淀川区の目標やさまざまな取り組みについてお話していただきました

西淀川区のさまざまな共創事業についてお話していただきました

 

最後に、前回出したアイデアと今日の講義内容を組み合わせて、提案のテーマを深める作業を行いました。興味関心、まちの課題、必要な提案、そのために必要な調査…といった順に、テーマを絞り込んでいきました。

興味関心、提案のテーマ、必要な調査の順に絞っていきました

提案のテーマがより具体化されていきました

それぞれの意見を共有した後、実際にまちづくりを行っている区役所の方のお話を聞いて、より提案のテーマが明確になってきたのではないでしょうか。

次回は西淀川の提案の中間報告をしてもらいます。どんな提案が出てくるのか楽しみです。

【前回までの授業の様子はこちら】

1回目 12月5日:公害ロールプレイと公害患者さんのお話

2回目 12月19日:西淀川フィールドワーク

 (あおぞら財団アルバイト・小松)


あおぞら財団では、フィールドワークや公害患者さんの語り部などを取り入れたオーダーメイドの授業、研修を行っています。SDGs達成に向け、パートナーシップで問題解決に取り組んだ大気汚染公害の経験を、現地で学んでみませんか?

あおぞら財団の授業、研修に興味のある方はこちら↓をご覧ください。

研修・教育(「あおぞら財団の研修・教育」のページに飛びます)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入 — aozorafoundation 公開日 2023年12月27日5:20 PM

【動画】谷智恵子弁護士インタビュー「裁判を動かすのは実際の真実の姿」ロングバージョンもご覧になれます

西淀川公害訴訟弁護団の一員であった谷智恵子弁護士のインタビュー動画のロングバージョンです。

谷弁護士は「被害班」として、裁判所で西淀川公害の深刻で広範な被害の実態を明らかにしました。裁判を動かすためにどのような思いで被害を明らかにしていたのか、また公害裁判の意味について語ります。

〇リンク先、所要時間

youtubeでご覧いただけます。

ロングバージョン

【前半】https://youtu.be/_f6yQwHIDFI

約18分

ロングバージョン
【後半】https://youtu.be/X363UZpcqKE

約17分

ショートバージョン
https://www.youtube.com/watch?v=y0sY4hL-h7k

約9分

※動画はインタビューの一部分です。全容は下記のサイトから読むことができます。https://aozora.or.jp/kougai_lecture/tool/oral_history/

 

【西淀川公害裁判とは】 1960年代から日本全国で大気汚染公害によって、多くの人が健康被害を受けました。大阪の中心部に近い西淀川区の被害は甚大で、累計7000人を超える人が公害病になりました。西淀川区には尼崎と此花・堺の大工場の煙が西淀川に集まり、道路を通過する大型ディーゼル車の排気ガスとの複合大気汚染となりました。その責任を問う西淀川公害裁判(1978~1998)は、企業10社、国、阪神高速道路公団を被告に、公害患者726人が原告となった大規模裁判でした。

【谷智恵子弁護士 略歴】 1947(昭和22)年生まれ。大阪市出身。1978(昭和53)年4月に弁護士登録し、同年4月18日に提訴された西淀川公害裁判に関わる。その後、泉南アスベスト裁判、住友金属男女差別裁判等に関わる。

映像協力 岸本景子

制作・著作 公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)

※この動画は地球環境基金の助成を受けて作成しています。

 

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2023年12月26日4:36 PM

鳥取県立八頭高校 研修受入れ(12/7)

2023年12月7日、鳥取県立八頭高等学校から約40名の学生さんたちが、研修旅行で西淀川を訪れました。
午前中に大阪公立大学の除本理史教授から「環境と経済」の講義を受けた後に、午後からあおぞら財団で1時間ほどの研修を受講しました。

 

前半30分は、①西淀川大気汚染公害の概要とあおぞら財団の設立に関する講義、②西淀川・公害と環境資料館「エコミューズ」 の見学の2つのプログラムを実施しました。20人ずつ2つのグループに分かれて、15分毎に入れ替わりを行いました。

西淀川大気汚染公害についての講義

西淀川大気汚染公害についての講義

エコミューズを見学

エコミューズでは裁判資料などの所蔵品を見学

後半30分は、修学旅行用の大型バスにあおぞら財団スタッフも乗せてもらい、西淀川のまちや工業地帯を見て回りました。
国道43号を経由して尼崎と中島の工業地帯を見て回りながら、車内のマイクを使ってまちの歴史や現状の公害対策についての解説を行いました。

国道43号には「環境対策」の文字が多く見られます

公害道路とよばれた国道43号には、現在、様々な「環境対策」がなされています

中島新橋から工業地帯や大阪のまちを望む

中島新橋から工業地帯や大阪のまちを望む

中島川河口部に見える阪神高速5号湾岸線

中島川河口部に見える阪神高速5号湾岸線

あおぞら財団での研修は1時間弱の間でしたが、西淀川公害の概要や現在の様子について広く知っていただけたかと思います。実りの多い修学旅行となっていれば幸いです。

公害患者たちは、「手渡したいのは青い空」を合言葉に数十年間闘って来られました。そして今日お越しいただいた高校生たちは、清々しい晴れ空のもと修学旅行で学ぶことができました。今を生きる私たちに、青い空を手渡していただけたのかな…と、ふと思いました。

鳥取からはるばるありがとうございました

遠路はるばるありがとうございました

 

 (あおぞら財団アルバイト・小松)


あおぞら財団では、フィールドワークや公害患者さんの語り部などを取り入れたオーダーメイドの授業、研修を行っています。SDGs達成に向け、パートナーシップで問題解決に取り組んだ大気汚染公害の経験を、現地で学んでみませんか?

今回のような修学旅行生の受入れも大歓迎です!

あおぞら財団の授業、研修に興味のある方はこちら↓をご覧ください。

研修・教育(「あおぞら財団の研修・教育」のページに飛びます)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入 — aozorafoundation 公開日 2023年12月25日4:11 PM

冊子「誰一人取り残さない教育のために」を発行

あおぞら財団では、公害の経験から学び、未来を創る市民を育てる教育を行っており、その一環として「誰ひとり取り残さない! 気候変動を構造的にとらえ未来につなげる教育プログラムづくり(地球環境基金事業)」の活動に取り組んでします。

この度、その成果として、冊子『誰一人取り残さない教育のために ―公害の経験を人権教育の視点から読み解く―』を作成しました。

人びとの健康や生活環境に被害を与える公害や気候変動。公害被害地域では、差別や排除と言った問題が引き起こされたにもかかわらず、いまだ十分な手だてが打たれているとは言えません。

この冊子では、公害の経験についてお話いただいたり、調査結果を聞いたりして、人権教育に長く取り組んでこられた方々を委員にお迎えして意見交換をした上で、「誰一人取り残さない」教育のためのポイントをコラムとして執筆していただいています。

本書の特色は、個別の事例から構造的差別を読み解き、そうした課題について人権の視点から問題をどうとらえ、どのようにアプローチすることができるかを委員の方々の豊富なご経験から解説いただいている点です。

公害の経験をお話いただく方としては、水俣病の未認定患者さんや、福島から関西に避難してきて差別を受けた方、そして今なお公害病に苦しむ若年層の大気汚染公害患者など、社会の中で注目されにくいグレーな立場の方々のお話を取り上げました。

その上で、重ねて理解するために、被差別部落出身だけれどずっとかくして生きてきた女性の経験や、相思社の患者相談の中で感じられたことなどのお話もうかがっています。

以下より、pdfデータをダウンロードできますので、ぜひご覧ください。

https://aozorazaidan.stores.jp/items/658243456b5929002b328c4f(リンク先は別サイトです)

 

A5判 83ページ、PDFデータ。2023年12月

デザイン 表紙:須藤彩、本文:白神加奈子

公害人権表紙_ol

 

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目次

はじめに
1.公害被害・差別に向き合う視点
◆認定・未認定のはざまで ――「胎児性水俣病疑い」という立場から  尾下葉子
コラム ホンモノとニセモノの線引き ――原因ではなくニーズを中心に  土肥いつき
コラム 差別をなくすために「原因」を学ぶ?  北川知子
2.人権を守るためにエンパワメントを
◆ 被災者として声を挙げるまで ――福島出身者に向けられるまなざしの中で  鈴木詩穂
コラム 「分かりたい」の落とし穴 ――どういう「問い」をもって語りに向き合うか  栗本敦子
コラム 自他の人権を守るような実践的行動力を育成する人権教育を  神村早織
3.被害構造の広がりを知る
◆「見えにくい」汚染による大気汚染公害患者の困難さ  谷内久美子
「病気という困難に強い社会」とは? ――大気汚染公害患者調査報告を受けて  尾下葉子
コラム 制度が勝ち取られてきた経緯を学ぶこと  北川知子
4.長期的かつ構造的な抑圧は当事者になにをもたらすのか
◆ なにが沈黙を生み出すのか  川﨑那恵
コラム 今の社会に適応しようとすれば、語れない  栗本敦子
コラム 「語り」が生み出される「場」  土肥いつき
◆ 患者の沈黙、語りの変化 ―水俣病患者相談の現場から  永野三智
コラム 聴く側の役割  北川知子
コラム 語ること・語らないこと、そして本当の願い  神村早織
座談会 被害と差別の痛みから社会構造を問う
おわりに

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印刷した冊子がご入用の方はあおぞら財団までお問合せください。
問合せ先
あおぞら財団(担当:谷内)
(Tel) 06-6475-8885
電子メール:webmaster[at]aozora.or.jp([at]を@に変えてください)

この冊子は地球環境基金の助成で作成しました。

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,事務局,環境学習 — aozorafoundation 公開日 2023年12月21日5:41 PM
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