大阪公立大学大学院の講義「都市基盤計画特論」(吉田長裕先生)の一環で、受講生5名が西淀川をフィールドに学びます。授業では4回にわたって西淀川に来る予定ですが、12月5日にその第1回が開催されました。
今回と次回はフィールドである西淀川のことを知り、体験することが主な目的です。
海外出張中の吉田先生からオンラインで挨拶をしていただきました
まずはじめに、フォトランゲージ「西淀川大気汚染公害」を行いました。配られた写真から読み取れる情報について話し合い、その写真にタイトルをつけるというグループワークです。
(参考:フォトランゲージ「西淀川公害」|あおぞら財団の研修・教育のページ)
すべての写真にタイトルを付け終えたら、1枚ずつタイトルを発表してもらい、同時に読み取れたことを共有してもらいます。講師からは、その写真は実際にはいつどこで何が撮られたのかの解説を行います。これは正解を目指すものではなく、想像力を膨らませることが目的です。
写真から読み取れることを話し合います
写真の背景と当時の状況を解説します
次に、ロールプレイ「あなたのまちで公害が起きたら」に挑戦しました。行政、市民、企業などの役割になりきって、公害問題対策についての合意形成を図ります。
(参考:ロールプレイ「あなたのまちで公害が起きたら」|あおぞら財団の研修・教育のページ)
役になりきってロールプレイを行った後、改めて他の立場からの主張に耳を傾けると、いろいろな発見や葛藤が生まれます。
「どうしても少数側に負担を強いるような対策(結論)に至ってしまうことに、もどかしさを感じた」「誰にどう支援してほしいかわからないほどに被害者が追い詰められる」といった感想があがりました。
配役ごとの思いと自分自身の思いが混ざり合います
小休憩をはさんだ後、西淀川大気汚染公害の概要についての講義が行われました。被害の発生から裁判の過程、和解から現在の対策までの概要を学びました。
講義風景
その後は西淀川公害患者と家族の会から、須恵さんと上田さんにお話をしていただきました。須恵さんからは主に当時のまちの様子や慢性気管支炎の苦しみについて、上田さんからは和解や補償および現状の対策などを中心にお話してくださりました。
右から上田さんと須恵さん
実は本来、この日は山下明さんにお話をいただく予定でしたが、心臓の具合が悪くなり入院されることになったため、急遽須恵さんにお話をいただきました。以前は治療法も限られていたために大量のステロイドの投与がなされ、現在、その副作用により心不全が引き起こされています。
今日は奥様である山下晴美さんが駆けつけてくださり、お話をしていただきました。公害被害の実情、および最も近くで一緒に闘ってきた家族の思いについて、強く深く語りかけてくださりました。
山下さんは「私は公害が憎い」と強く語りかけてくださりました
最後に、今日一日の振り返りを行いました。
印象に残ったこととして、「ロールプレイでは工場側の気持ちもわかりつつ、しかし公害患者さんの実際のお話を聞いて、やはり気持ちが大きく揺れ動いた」「公害は今も続いているということを実感した」といったことがあげられました。
また今度の都市基盤計画を考えるうえで、「今までの環境基準で本当に大丈夫か、という視点を持つ」「例えば交通弱者など、弱い立場の人をいかに作らないかが大切」といった思いがあげられました。
振り返りの様子
次回はタンデム自転車に乗ってフィールドワークを行う予定です。
(あおぞら財団アルバイト・小松)
あおぞら財団では、フィールドワークや公害患者さんの語り部などを取り入れたオーダーメイドの授業、研修を行っています。SDGs達成に向け、パートナーシップで問題解決に取り組んだ大気汚染公害の経験を、現地で学んでみませんか?
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